LaGrande Technology

はじめに

2003 年から 2004 年にかけて、Intel は自社の CPU に関して 4T というものを掲げていました。それは、

  • HT – Hyper-Threading Technology
  • LT – LaGrabde Technology
  • VT – Vanderpool Technology
  • CT – Clackamas Technology

です。Intel はこれらが Intel が注力する今後の技術であると高らかに謳い上げ、AMD との差別化をはかっていました。

Hyper-Threading Technology

これはまだ覚えていらっしゃる方も多いかと思いますが、NetBurst に搭載された SMT(Simultaneous Multithreading) に Intel が名づけた名称です。2つのスレッドを実行することで、あるスレッドの実行中に前後関係からストールせざるを得ない時に、他方のスレッドだけでも実行を続けさせることで、1スレッドしか実行しない場合よりも効率的に演算器を使用して、命令の実行効率を上げようとする技術です。

LaGrande Tenchnology

従来のソフトウェア実行環境だけでは確保が不可能な、ハードウェアの枠組みまでを含めた真のセキュリティ環境を実現する技術の総称を Intel は LaGrande Technology と呼んでいました。この技術は当時の Longhorn 、つまり現在の Windows Vista で使われることになっていました。

なお、LaGrande Technology は現在 Trusted Execution Technology に名称が変更されています。

Vanderpool Technology

現在 Virtualization Tenchnology に名称が変更された、ハードウェアレベルでソフトウェアから見たハードウェアの仮想化(抽象化)を行う技術のことです。この技術は LaGrande Technology の基本となる技術で、その上に LaGrande Tenchnology が実装されると言われていました。

Clackamas Technology

AMD64 互換の 64-bit 拡張命令をこのように呼んでいました。この後、IA-32e に名称が変更され、さらに EM64T に変更されました。そして最近、再度名称が変更されて Intel 64 という名前になりました。

余談になりますが、Intel は当初 80×86 系のアーキテクチャに 64bit 拡張を持ち込むことに消極的であったと言われています。その後 64bit 拡張を盛り込むことを決定した際には、AMD64 ではない 64bit 拡張を設計していたとも言われています。

失われた2つのT

上記4つのTのうち、現在まで残っているのは Vanderpool Technology と Clackamas Technology のみです。LaGrande Technology は当時も実装中であり今後の実装予定という位置付けでした。そのため当時のラインでも搭載しているチップは発表済みの製品にはありませんでした。残りの3つのTは NetBurst から Pentium M のラインへ移った際に消えましたが、その後 Vanderpool Technology と Clackamas Technology だけが Core Microarchitecture において復活しました。2006 年のプロセッサには搭載されているはずの LaGrande Technology は、現在のプロセッサにはまだ搭載されていません(Intel のことですから、すでに実装が行われてあり、チップ上で無効にされている可能性もないわけではありませんが)。

後退した LaGrande Technology

当初 LaGrande Technology として、2002 年 9 月 10 日に、IDF(Intel Devloper Conference) Fall 2002 で語られたビジョンは非常に野心的なものでした。「安全なプラットフォームのためには、安全なグラフィックス、安全な入出力デバイスも必要だ。全ての入出力がセキュアでないと、セキュリティに穴が開いてしまう」(参考記事:Impress WatchPC Watch – 後藤弘茂のWeekly海外ニュース PCアーキテクチャの大変革を目指す「LaGrande」をIntelが発表)というわけで、関連する全てのデバイスやその接続を含めてをセキュアにしようという一大構想でした。もちろん、これは CPU を持つ Intel だけでできる構想ではなく、パソコン業界全体を巻き込んでのものでした。IDF では今後 LaGrande について継続的に説明していく、としていたのですが、現在ではそんな話は聞こえてこなくなってしまっています。

ではその後の LaGrande Technology 、現在の Trusted Execution Technology とは一体どのようなものになったのでしょうか。Intel が用意している Intel Trusted Execution Technology というページを見てみると、このビジョンは大きく後退したものに変わったようです。まず第一に、資料の更新がほとんどなされていません。Copyright 表記を見ると、多くの資料が 2003 になっています。第二に多くのパソコンへの搭載を目指していたはずの Trusted Execution Technology が、Intel vPro Technology の一部に再編されています。ご存知の通り、Intel vPro Technology は企業向けの技術群であり、家庭向けの技術ではありません。そして、Windows Vista も結局この Trusted Execution Technology をサポートするソフトウェアは入っていません。

2007 年の Intel vPro Technology で LaGrande Technology として提唱していた大部分の実装を行うようですが、資料を見る限り「入出力全て」というところまではいっていないようです。そして OS のサポートは得られていないように見えます。Virtualization Technology の管理ソフトウェア VMM で全てのソフトウェアサポートを吸収する方向に修正したのかもしれません。

いずれ 2007 年の投入が近づけば、詳しい説明がなされるのでしょう。

まとめ

現在の Intel は当時の Intel と異なり、XXXX Technology がどうこうということを最前面には出さなくなっているようです。Core Microarchitecture 謳われているのは、Virtualization Technology と I/O Acceleration Technology だけです。それも前面に出すというよりは、こういう技術もありますよ、という程度の扱いです。

Intel はこれらの技術を引っ込めたというよりは、現在は Core Microarchitecture 向けと変化したパソコン業界のビジョンに合わせて再編成しているのかもしれません。また なんとか Technology と列挙してアピールする日がくるのかどうか。楽しみに見ていきたいと思います(なんとなくそういうアピールはもうしないような気もするのですが)。

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