ハイデフ

はじめに

日本ではハイデフといえば、おそらくは Microsoft の Xbox360 のことだろう、となると思います。しかし、今回私が取り上げるハイデフは Xbox360 のことではなく、High Definition ビデオ、つまり高精細のビデオの話です。Blu-ray や HD DVD のことです。ハイデフという言葉が一般的ではなかった日本に Xbox360 がハイデフという言葉を持ち込みましたが、ドメイン名では「highdef.com」が1999年に取得されており、少なくとも Xbox360 が起源の言葉ではないことが分かります。一部で言われている Xbox360 起源説はこれにより否定されると言っていいでしょう。

SD と HD

日本では High Definition ではなく、日本放送協会(NHK)が提唱したハイビジョン(Hi-Vision)が一般化しています。しかし、「High Vision」や「Hi Vision」、「Hi-Vision」などの語句で検索すると引っかかるのは日本のサイトがほとんどであり、ほぼ日本でしか通用しない言葉であるということが分かります。そこで今回は「ハイデフ」という言葉を使ってみました。あえて意味をいうとすれば、現行方式を SD 、高精細度方式を HD というときに一貫性があり分かりやすい、といったところでしょうか。ハイデフは聞きなれていなくても、高精細度方式を HD と呼び、逆に現行方式を SD と呼ぶのは聞いた事がある(目にしたことがある)人は多いのではないでしょうか。HD は前述の High Definition の頭文字を取ったものです。同様に SD は Standard Definition の頭文字を取ったものです。ここでも Hi-Vision は登場しません。

ハイデフの威力

現在の方式である SD に対応したデジタル映像媒体 DVD-Video はフル D1 形式のもので幅 720 ドット×高さ 480 ドットの映像として収録します(正確には高さ 240 ドットの映像を 0.5 ドットずらしたものを 1/60 秒単位で格納するインターレース方式です←対象地域の放送方式が NTSC の場合)。これに対して HD に対応したデジタル映像媒体 Blu-ray ディスクと HD DVD ディスクでは最大の D5 形式で幅 1920 ドット×高さ 1080ドットの映像として収録します。しかもこれは前者のインターレースではなく、そのまま表示するプログレッシブです。

私はパソコンで DVD-Video を見ることが多く、インターレースは邪魔以外の何者でもないという印象を抱いています。余りにもインターレースが目立つ作品に限ってはテレビでも見ていますが、私の視聴環境ではテレビの方がディスプレイよりもインチが小さいという問題点があります。なので、できればパソコンで見たいのです。

脱線したので話を戻します。

このように日常として SD の映像を見続けている私ですが、稀に D5 形式(つまり 1080p )の映像ファイルを入手して見ることもあります。その時にとにかく映像の精彩さ(精細さ)に目を見張ります。これは見てみないと分からない美しさです。SD 方式の映像とは比べ物にならない美しさで、これを見てしまうと、SD 方式の映像が突然3倍録画の VHS テープの映像のように見えてきてしまうほどです。機会があればぜひ見てみることをお勧めします。本当にきれいですから。

Blu-ray に傾く私の心情

また話がそれるのですが、私はアニメで著名な監督「押井 守」氏のファンです。氏の作品は、一般の方でも見て理解でき、興行的にも成功するものと、一般の方には倦厭され、興行的にはダメなものに分類することができるように思います(中くらいがない、という意味です)。私は概ね、多くの作品について「好きだ」といえます。中にも例外的な作品、例えば「天使のたまご」のような作品もあります。あれは5回ほど見てみましたが、さっぱり理解できませんでした。絵はきれいです。線レベルで書き込まれた映像美はすばらしいものでしたが、テーマが難解すぎ、私の理解の範疇を超えていたのです。この作品と同じく、一般受けしなかった非常に美しい映像美を誇る作品に「イノセンス」があります。

「イノセンス」は前作「攻殻機動隊 – GHOST IN THE SHELL -」に続く作品であり、主人公バトーが生命とは、生きるということとは何か、について思い悩みながら事件を解決する話です(たぶん)。あるいは犬と人形を愛でる作品かもしれません。

私が持っているのは発売当時コンビニエンスストアで購入したスタンダード版(ブエナ ビスタ ホーム エンターテインメント / VWDS9102)で、これには本編の DISC 1 と映像特典 DISC 2 の2枚のディスクから構成されています。この DISC 2 には、本編の映像にコメントを監督 押井氏と演出 西久保氏が述べて重ねるものがあります(オーディオコメンタリー)。この中で西久保氏が「劇場でないとわからない」と述べている個所があります。そう、この作品は SD に収まる作品ではないのです。少なくとも現行の DVD-Video という媒体は、映画館品質を家庭に持ち込むものではないということが、この発言からもわかります。そして映像を見ていても線の細さやその動きの細かさが SD 方式による1ドットの大きさの限界を示しているように思えたのです。もちろん知識としてはそのことを理解していましたが、この一言を聞くまで、さらなる高精細を欲することはありませんでした。そして、そのときにこの思いを叶えることはできませんでした。

しかし、ようやく状況が変わってきました。Blu-ray と HD DVD のリリースです。業界が2つに分裂して立ち上げた2方式ですが、いずれにしてもこれらの方式は HD 方式による映像の家庭への導入を可能にしたのです。私の見立てでは、Blu-ray 方式が HD DVD 方式に勝利すると予想していますが、しばらくの間は並存し、双方それぞれに同じ作品がリリースされていくと予想しています。なぜ Blu-ray 方式が勝利すると見ているか、その理由を述べると、それは Microsoft が支持しておらず、PLAYSTATION 3が標準で搭載していることです。前者の理由は簡単で、何かもが Microsoft の手中に入ることに対する心理的な抵抗が非パソコン業界には根強くあるだろうということです。後者はどんな理由であれ、再生できるデバイスが世の中に出回るということで、結果としてのシェアが伸びるであろうということからの予想です。Xbox 360 が標準で HD DVD をサポートしていれば、この事情は反転していたでしょう。もちろん、これは現実ではなくて、私の予想の範囲内のことですが。

このように Blu-ray 優位であると思う私がさらに Blu-ray に傾いたのは、前述の「イノセンス」が Blu-ray でリリースされるということが発表されたからです(関連するインプレスの記事)。これを入手して Blu-ray で 1080p モードでの再生をすれば、SD 画質では見れないものを見れる、そう思うだけで胸が高鳴ります。

私はこうした動機から、おそらくは PLAYSTATION 3 を購入すると思います。ただ、予約しないと買えないとなると、購入が先延ばしになる可能性もあるかもしれません。いずれにしても、ソフトだけは買うと思います。そして、せっかく買うのだから、Blu-ray 方式がこの方式戦争に勝利することを期待したいところです。

HDCP という存在

これらの HD 方式に対応したコンテンツは、デジタルというその性質とその精細さ(精彩さ)から、コンテンツホルダーが強力な保護を求めています。この関係で、ハイデフに対応したデバイスに対して、確かにディスプレイ&オーディオ機器であることを保証して出力するための規格 HDCP が策定されました。これにより、再生機器に接続されたディスプレイ&オーディオ機器が確かにディスプレイ&オーディオ機器であることを確認し、出力するか否か判定することが可能になりました。これらの確認ができなければ、HD な出力が可能なデバイスであっても、SD 方式にダウンして出力するという手段を可能にします。

現在のような過渡期は特になのですが、HDCP に対応した機器はあまり多くはありません。また HDCP を必須とするか否かはコンテンツホルダーが決定できるようです(少なくとも Blu-ray 方式はそのようです)。

このこと(対応するデバイスの少なさ)から初期の頃は HDCP を必須としないコンテンツが多くなるのではないかと想像しているのですが、どうなるでしょうか。私のメイン視聴環境は HDCP などを無縁なアナログ RGB 環境なので気になって仕方ありません(もちろん、HDCP な環境も揃えるつもりはありますが、従来環境でも見ることができるのであれば、なおいいのです)。

まとめ

私はたった1つの作品を元に Blu-ray を支持しているわけですが、これが HD DVD で出てくれば HD DVD でいいやぁ、となるのかもしれません(PLAYSTATION 3を実際に購入してしまえば、やっぱり Blu-ray がいいや、と言い出すことは間違いないでしょう)。そのくらい、方式よりもリリースされるコンテンツや自分の投資が大事なのです。それよりも大事なのが、見てみないと分からない HD 方式による映像美です。実のところ、オーディオ品質の向上よりも映像(ビデオ)の品質向上の方が多くの人に理解しやすく、また同時に受け入れやすいと思うのですがいかがでしょうか(しかし SD レベルの現行テレビでいくら宣伝しても伝わらないのが辛いところでもあるわけですが…)。

現在 Blu-ray 方式を支持する私ですが、HD DVD 方式であっても、とにかく HD 方式による画質が一般化することの方を大事に思っています。早く HD 画質が一般化した世の中になることを祈りつつ、今回はここまでにしたいと思います。

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