Intelが「Intel Developer Forum 2013」で発表した「The Internet of Things(IoT)」向け新プロセッサー「Intel Quark」は、いったい何のプロセッサーをベースとしているかについて2つの説が出ていますので、それぞれの記事を紹介します:
- 【後藤弘茂のWeekly海外ニュース】IntelがAtomよりさらに低電力なCPU「Quark」を発表 ~その正体はClaremont – PC Watch
こうして見ると、Intelが今回のIDFで見せたQuarkは、Claremontではないかという疑問が沸いてくる。Claremontなら、すでにテストシリコンがあるので、見せることができる。Claremontの中身は、“フルシンセサイザブル”なPentiumコア(P54C)で、シンセサイザブルなx86コアというQuarkの条件も満たしている。ダイサイズ的には、IDFで見せたチップにほぼ近い。
- プロセッサ-マイコン:Intelが“iPhone 5sのA7”と同じ64ビットSoC「Quark」を発表――マイコン市場を脅かすか? – EE Times Japan(Rick Merrittさんの記事の滝本麻貴さんおよび田中留美さんによる翻訳記事)
ベテランのプロセッサ市場アナリストであるPeter Glaskowsky氏は、「Quarkは、現在特許権が消滅しているx86の旧式アーキテクチャ『386』の可能性がある。だから、Intelは、潔くオープン化に踏み切ったとみられる」と述べている。
前者の後藤さんの記事ではPentium(P54C)、EE Timesの記事では80386ではないかと予想しています。いずれも64ビット拡張のない、32ビット世代のプロセッサーです。このことから当然Intel Quarkは32ビットプロセッサーであろうと思うのですが、EE Timesの記事では、
Quarkは、業界最小となる64ビット版x86プロセッサだ。このためIntelは、将来的にあらゆる製品が64ビット対応になっていくことを明示した形となる。
としています。しかし、これではIntel 80386ベースだという話と矛盾します。それに、IntelがQuarkは64ビット対応だと明示的に言っていないようなので、やはり32ビットの可能性が高いのではないかと思います。64ビットにはメリットもありますが、当然デメリットもあります。小さなプロセッサーを目指す場合には、32ビットを選択するのもありだと思うのです。
そのうえで、80386ベースでは処理能力が足りないうえに、現代においては規模が小さすぎて扱いにくい(十分に多くのSoCと合わせないと製造に適するロジック量にならない)と考えています。さらにいえば、チップセットというものが現在のような形で成立するまえの80386と成立後のPentiumでは後者のほうが扱いやすいはずです。
以上のようなことから、私としては、
- Intel Quarkは32ビットプロセッサーである。
- Intel QuarkはPentium(P54C)をベースとする。
と予測します(2013年10月11日追記:実際のプロセッサーコア仕様については「Intel Quark Core自体の仕様(コードネームはLakemont Core?)」にまとめました)。
少し余談になりますが、EE Timesの記事からもう少し引用します:
ただ、こうした筋書きの中で、Intelにとって1つの懸念事項となるのが、AMDが64ビット版x86に関する特別な特許を保有しているのかどうかという点だ。
これはないです。というのは、若杉 紀彦さんによる「IntelとAMDが和解。IntelはAMDに12億5千万ドルを支払い – PC Watch」という記事の下記引用部分にあるように、特許クロスライセンスを締結しているためです:
この和解により、両社は向こう5年間の新しい特許クロスライセンスを締結し、ライセンス違反に関する訴えを取り下げるとともに、IntelはAMDに対して12億5千万ドルを支払うこととなった。
このようにこの点はクリアになっています。それにAMDにしてもIntelにしても、それぞれの特許のクロスライセンスをしなければ、それぞれのプロセッサーを製造することもままなりません。
もしもこの点を蒸し返すと、Microsoft、AMD、Intelの三者による合意事項(私が結んだと予想しているMicrosoftの仲介による合意→詳しくは「Intelが予定していたIA-32の独自64ビット拡張の仕様を推測する」の脚注「※24」を参照ください)に反することになるのではないかな~、と思います。まぁ、これは私の憶測に過ぎないことなのですが…。
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