はじめに
私の自宅には「ほぼ」常時動作しているサーバーがあります。現在は OS に「Microsoft Windows Server 2003 Standard Edition」を使用しています。これは個人でリテール用箱入りのものを買いました。また、同時に仮想化のために「Microsoft Virtual Server 2005, Standard Edition」などというものも買いました。2 本で 20 万円くらいです。後者は購入後 1 年くらいで Microsoft Virtual Server, Standard Edition の上位版である Enterprise Edition が無償で公開されて、とても悲しかった思い出があります。
ハードウェア的には以下のような感じです。
種別 | 型番 | 補記 |
---|---|---|
CPU | Intel Pentium 4 630 | NetBurst アーキテクチャー 2 代目 Prescott-2M コア採用 3.0GHz Hyper-Threading, Intel 64, XD Bit 他対応 |
M/B | Intel D915GEVLK | 当時としては珍しい DDR2 DRAM 対応ボード |
RAID ユニット | RAIDON TECHNOLOGY, INC SohoRAID SR2500 | PATA で M/B と接続する PATA ハードディスクを2台搭載可能なハードウェアRAID 1機器 |
ハードディスク | HGST HDS724040KLAT80 | 400GB のハードディスクを 2 台搭載 |
グラフィックボード | EN7600GS SILENT/HTD/256M | ファンレスの NVIDIA GeForce 7600 GS 搭載ボード。当初はこれではなく GeForce 6600 系の某ボードを使用していたがファンが故障し交換。 |
追加ネットワークカード | グリーンハウス製 Intel(DEC) DC21143 搭載ボード | サブネットワークとの接続用。当時の定番。現在はもう Windows にサポートするドライバーが付属してこない。 |
メモリー | PC2 4300 DDR2 DRAM 512MB × 4 (2048MB / 2GB) | |
光学ドライブ | TEAC CD-552E | 通常の PATA 対応 CD-ROM ドライブ |
M/B が Intel D915GEVLK なのが、結構思い入れのあるところです。それは内蔵している Marvell Yukon 88E8050 が、PCI Express 経由で接続されているところにあったりします。当時、まだ PCI Express は市場に出始めたばかりで対応する製品はグラフィックボードばかりであった時期です。そんな時にオンボードの PCI Express 経由接続で Gigabit Ethernet が使用できるというのは、自宅サーバーを立てたい私にはとても魅力的でした。ただ、この選択をすると、メモリーが当時主流の DDR SDRAM ではなく、DDR2 SDRAM になるという問題もありました。容量あたり 5 割増しの価格(平均単価で計算)であった DDR2 メモリを泣きそうになりながら買いました。
同じページに HDD の価格も書いてあるのですが、前述の HDD 単価は 31,980 円(最安値)です..。まだすごい、高かったんですね。といいますか、今が安いのかもしれませんが..。
すべては 6 年前の話です。気づくとずいぶんと時間は早く流れるものです。このサーバーは、DHCPサーバー、ファイルサーバー、Microsoft Virtual Server、IIS などとして、今現在までがんばってくれています。
置き換え先の候補サーバー
さすがに 6 年もたつと、いろいろな点でスペックの見劣りや現在求めるものとのギャップが出てきます。目につくのは、HDD の容量、消費電力、仮想化性能、マシンサイズ、動作音、そしてこれは必ずしもスペックとは関係しないのですが、経年劣化による故障への不安です。故障してしまうと、もうスペアとなるパーツが手に入りそうにないのが痛いところです。
また、先日の「東日本大震災」で、バックパネルがゆがむというダメージを受けている点も気になります(余談ですが、気象庁の発表では最大震度 5 強の場所だったのですが、あまり離れていない隣の市が最大震度 6 弱で、どうも、5 強よりは 6 弱程度揺れたのではないかと思っています。近所の人たちと不安の中、数時間曇り空の下で避難していました。私の部屋は高く積み上げていた本やその他のものが一面に散乱し、足の踏み場もない状態になりました。私の居住するアパートや近所のお宅は外壁が損傷し、またいくつかのお宅は屋根瓦が脱落するなどの被害が出ていました。その後近所の鉄筋コンクリートによるマンションに避難したのですが、そこは私の住居ほどは揺れませんでした。どうも地震の揺れはかなり局地的な差があるように思えました)。
この地震に伴って原発事故が発生し、この関係で電力供給力に問題が生じて、節電が求められたことも私の背中を押しました。6 月は 14 %ほどの節電(昨年比)を実現したものの、15% には届きませんでした。7 月は 16% 強(同)を達成しましたが、まだまだ削れるのではないかという思いがありました。あとはダイエットが楽しくなってくるのと同じパターンで、さらに推し進めたくなるものです。
そんなこんなで、昨年発表されてから気になっていたヒューレットパッカードの ProLiant MicroServer を導入することにしました。
HP ProLiant MicroServer のメリットとデメリット
一番の魅力は、やはりそのコンパクトさにあると思います。この小さな筐体に 4 本のハードディスクドライブを搭載できます。そのうえ、ドライバー(ねじ回し)レスのメンテナンス性、大型低速ファンによる静粛さ、消費電力の少なさ、そして低価格などというメリットが目につきました。半面、発表された 2010 年 9 月 9 日から最近まで導入に踏み切れなかったのは、デュアルコア 1.3 GHz という処理速度は現代において十分なのか、その点の決断ができなかったことが大きいように思います。また、HP ProLiant 系列のサーバーであるのにもかかわらず、RAID を組めるのは Windows 系の OS をインストールしたときのみ、という制限も大きく気にかかりました。というのも、今回はメインの OS を Windows 系ではなく RedHat 系のクローンにしようと考えていたためです。
欠点を補う
処理速度はともかくとして、ハードディスクのデータ保護のために RAID に関しては妥協するわけにはいかないため、いろいろと検討をしました。一つはハードウェア RAID を導入するという道です。ここでいうハードウェア RAID とは OS からはハードディスクドライブに見えるという完全なハードウェア RAID です。もう一つはカード型 RAID です。これは専用のドライバーを必要とします。また、ドライバーで各種 RAID 処理をどの程度するかによって、その製品の種別や価格は大きく異なります。今回は性能よりも低消費電力および低価格へ舵を切ることとし、選定を行いました。
そんな中、最近 HighPoint Technologies, Inc の RocketRAID 2720 シリーズが、比較的安価に出回っていることを知りました。この RAID カードは Windows 系のみならず、各種 Linux、FreeBSD 系にも幅広く対応しているという点が気に入り、この RAID カードを選択する方向に傾きました。
ほかには初期状態で 1GB しか搭載していないメモリーを増設することを検討しました(思えば 1GB 「しか」というのもすごいですよね、リプレース対象のサーバーのメモリは全体で 2GB なのですから)。その結果、Transcend Information, Inc の TS512MLK72V3N を選びました。選択のポイントは必要性能(Unbuffered ECC)を完全に満たした 4GB のメモリーであること、永久保証+全品検査済みであること、そしてそういった条件を満たす中で比較的安価であることです(最安値ではないですが、それはそれで安心がほしいこともあります)。これを 2 枚調達し、8GB とすることにしました。
残りのメインパーツはハードディスクドライブ(ハードドライブ)です。現在のハードディスクは 4KBytes/Sector とした安価方面に割り切った仕様のものと、従来のように 512Bytes/Sector とした仕様のものの 2 種類があります。今回は無用の混乱を避けたいこと、パフォーマンスのために余計な設定を考慮しなければならないという事態を避けたいことから、512Bytes/Sector の製品を選ぶことにしました。また、最近はエコロジーや消費電力低減のために可変回転数かつ低回転数方式の安価なハードディスクが出回っていますが、RAID の場合には個々のハードディスクの事情と RAID 全体のビジー率は比例しないため、可変回転数ではいろいろと性能上の問題が発生する事態が予想できたため、固定回転数のものを選ぶことにしました。この結果、回転数は 7200rpm を明記したものを選択することになりました。容量は RAID カードの特性(3TB での動作が安定しないという報告がある:「激安だけど、3TB超は当分おあずけ?なHOST-RAID HighPoint RocketRaid 2720。 ひねもす庵」および「オリオスペック HighPoint RocketRAID 2720-Promotion SGL について 静音パソコンショップ OLIOSPEC Internet Shop」など)と価格面の問題から 2TB を超えないものを選択することにしました。その中で比較的安価なものを選択するということで、最終的に日立グローバルストレージ(HGST)の Deskstar 7K3000 シリーズである HDS723020BLA642 のリテール向け純正箱入り 0S03191 を選択することにしました。
残る光学ドライブ(DVD ドライブ)はなんでもよかったのですが、1780円でヒューレットパッカードの「24X Multiformat DVD/CD Writer dvd 1260i」を見かけ「HP のサーバーに HP の DVD ドライブはちょうど良いと思い」これを選択しました。
これで必要なパーツの選定がすべて終わりました。
次期自宅サーバー候補の決定スペック
種別 | 型番 | 補記 |
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CPU | AMD Athlon II Neo N36L | K10 アーキテクチャ、デュアルコア 1.3GHz、AMD 64、AMD-V 等に対応 |
RAID カード | HighPoint Technologies, Inc RocketRAID 2720 | 末尾が SGL の型番の製品があればその方が安くて今回の用途には合致する。RAID 5 を組む予定。 |
ハードディスク | HGST Deskstar 7K3000 HDS723020BLA642(0S03191) | 7200rpm, 512Bytes/Sector, 2TB のハードディスクを 4 台搭載 |
グラフィック | オンボード(ATI Radeon HD 4200系) | オンボード搭載のグラフィック機能を使用 |
サブネットワークカード | なし | サブネットワークを廃止するかどうか悩み中。 |
メモリー | PC3 10600 DDR3 DRAM 4GB × 2 (8192MB / 8GB) | Unbuffered ECC、ただし今回は実動作 800MHz |
光学ドライブ | HP 24X Multiformat DVD/CD Writer dvd 1260i | HP 製で今回の用途にベストマッチと考えて選択 |
ここまでいろいろと構成を検討してきましたが、本来であれば構成を考える段階でもう一つ考えておかなければならなかった問題がありました。それはそれは最大消費電力です。今回の HP ProLiant MicroServer の電源は定格 150W と比較的少ないものです。実はこれらをすべて購入してから計算してちょっと青くなりました。なんとハードディスクのスピンアップだけで消費電力が 120W に達する計算です。ほかにも CPU や M/B 他いろいろな電力が必要となるために、ぎりぎりとなる計算なのですが、この構成でなんとか問題なく動作しました。これ以上何かを追加するのは消費電力的に危なそうに思えます。
追加でグラフィックボードを別途搭載しなかったのは、PCI Express x16 のポートに HighPoint RocketRAID 2720 を挿したためです。このカードは PCI Express x8 対応であり、PCI Express x1 のスロットには挿入できません(できたとしてもパフォーマンスは本来よりも下がってしまいます)。そういった理由により、グラフィック機能はオンボードの機能を使用し、様子を見ることにしました。これにより CPU と GPU がメモリーを共有することになるため、ややパフォーマンスへ影響がありそうな点と、メインメモリーの容量を持って行かれる点が懸念点となります。
サブネットワークカードを PCI Express x1 のポートに指すかどうかは悩みどころです。GPU を内蔵にして何らかの問題があれば、こちらの PCI Express x1 のポートに挿すということになるかもしれませんし、リモートアクセスカードを導入するという選択肢もあるからです。
新自宅サーバー候補とはどういうこと?
ここまでリプレースする目的で計画しているサーバーを「候補」としてきました。これは、必ずしもリプレースを実施するわけではない、ということです。これからしばらく従来サーバーと併用しつつ使用し、問題がなければリプレースを実施する予定です。これだけいろいろなパーツを純正の状態から追加すると、HP ProLiant の安定性を期待するのは困難です。このため試用期間を設けるつもりです。
ちなみに今回リプレース対象とするサーバーの前にも自宅サーバーがありました。OS は Windows NT Server 4.0 、CPU は Pentium II 300MHz、M/B は Intel SE440BX-2、メモリーは PC-100 CL-2 SDRAM DIMM 384MB(128MB × 3)、RAID カードは Mylex AcceleRAID 250(DAC960PTL-1-8E)、HDD は外付け HDD 専用ケースに Ultra 2 Wide SCSI 接続の IBM DNES-309170(9.1GB 7200rpm) × 4 を入れて、5 年ほど使用しました。さらにこれとは別に Linux サーバーをほぼ同様の構成で、ハードディスクドライブの台数を 2 台で使用していました。そしてこのころはまだ手ごろなルーターやファイアウォールがなかったため、Pentium with MMX Technology な CPU を搭載したパソコンに Linux を入れて代わりに使用していました。
おわりに
次回はマシンの組み立てやソフトウェアのインストール、設定等の話題を順次取り上げたいと思います。