インテル株式会社がInternet of Thingsの戦略を説明

インテル株式会社(以下、インテル)がIntel本社(以下、Intel)のリック・ドワイヤー氏(Intel セールス&マーケティング事業部副社長兼エンベデッド・セールスグループ ゼネラルマネージャー)を招いて、同社のInternet of Things(以下、IoT)戦略の説明会をしたそうです:

多和田 新也さんのこの記事から情報を引用しつつ、私の考えをコメントしてみたいと思います:

登壇したIntel セールス&マーケティング事業部副社長兼エンベデッド・セールスグループ ゼネラルマネージャーのリック・ドワイヤー氏は、「Intelが持っている、トランジスタや製造工程、Wind RiverやMcAfeeといったソフトウェアなどはIoTを具現化できる技術。プロセッサはQuarkからAtom、Core、Xeonとスケーラビリティがある。これほど幅広い資産を持っているのはIntelしかいない。ビジネスを抜本的に変えるチャンスにワクワクしている」とアピール。

確かに幅広い資産を持っているのがIntelの特徴です。しかし、パソコンとサーバー以外の分野ではあまり成功しているとは言い難く、それゆえ実績ではなく幅広い資産を強調する形になったのではないかと感じます。IoT分野はパソコン/サーバー事業よりも組み込み分野に近い世界ですから、Intelは挑戦者です。そのことを正しく認識しているということなのでしょう。

Quark X1000やAtom E3800といったIoT向けプロセッサをベースに、Wind RiverのプラットフォームとMcAfeeのアプリケーションによって、既存のデバイスをクラウドへ接続するためのシステムとなる。

既存のデバイスの多くは、現在ARMアーキテクチャが駆動しています。それをIAアーキテクチャに置き換えるためには、それを実行するコストと期間を投資することに対する説得材料(メリット)が必要です。それがWind RiverMcAfeeのソフトウェア資産、そしてパソコンとサーバー分野で蓄積された各種ソフトウェア資産ということなのでしょうが、メーカーが独自に開発したソフトウェア資産のことも考えると、やはり一筋縄ではいきにくいのではないかと思えます。

こういった点を考えると、やはりコストカットのメリットを強調して対抗することになりそうです。強力で多種多様な言語製品とライブラリーやパソコン/サーバー分野向けに作られた各種の使いやすい/あるいは慣れた開発ツールで開発期間の短縮、パソコン/サーバー分野でIAアーキテクチャを習得済みの人員を活用できるなど、コストカット可能だという点を売りにしていくことになりそうです。

ところで、この分野ではARMアーキテクチャでも下位のコアとなるCortex-M系のものが使われている分野も数多くあります。この部分に対抗するコアをIntelは提供できていません。現在のIntel Quark Core(Lakemont Core)よりも小さなコアを用意する必要があるように思います。

さらに、新たな業界として小売業を提案。ここに向けたソリューションとして「リテール・クライアント・マネージャー」を発表した。これは、デジタルサイネージのコンテンツ作成から配信管理、Intel AMTを用いたデバイスの管理、ログ/レポートの取得までを統合したものとなる。

これはパソコンに近しい分野(デザイナーと開発者はWindowsかOS Xかは別にしてIAアーキテクチャとその上で動くソフトウェアを使用している)であるため、比較的親和性が高いですね。それに、Intelがいうようにすでに存在しているIntel AMTによる管理環境がそのまま使えるのは大きなメリットとなるでしょう。一方で、このIntel AMTはIoT向けプロセッサーコアの中では、Intel Atom E3800シリーズでしか使用できません(Intel Quark SoC X1000では使用できません)。

全体を通して、Intel Quark SoC X1000シリーズを活用する具体的なビジョンが示されていないようなのが残念です。現在策定中、と言ったところなのでしょうか?

おまけ

ところで、この記事にはQuark X1000搭載のリファレンスボードの写真も掲載されています。Intel Galileo Development Boardの色違いの同じボードのようですね。コードネームと思われる「KIPSBAY」との記載があるのが見えます。

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