はじめに
昨日のコラムで「ペイル・コクーン(スタジオ六花)」を紹介しましたが、そのDVDに同時収録されているのがこの「水のコトバ(Aquatic Language)」という短編作品(9分7秒)です。もちろん、このアニメーションも吉浦 康裕さんによる作品です。
この作品は公式ページによると、
『水のコトバ』は吉浦が大学四年生の時に制作した自主制作アニメーションです。
とのことで、この高い完成度の作品をこんな若い時期に、と驚かされます。※1
あらすじ
私がストーリーを下手に解説するよりも公式ページの解説が素晴らしかったので、その部分を引用します。※2
とある喫茶店。偶然集った7人の男女。フランクなウェイトレス、彼女に振られたことをグチるダメオトコ、ガールズトークに花を咲かせるオシャベリとクール、先日体験した不思議な出来事を必死に話すデカとチビ、ひたすら本を読み続けるホン…。彼らの会話が織り成す不思議な時間。コトノハの君が見守る世界、水のコトバの浮遊空間。ちょっと覗いてみませんか?
さかきけいの感想
本作はとにかく最初から最後までほとんどずーっとしゃべくり倒しています。しかも、カウンター内の女(ウェイトレス)+カウンター席の男(ダメオトコ)、テーブル席の女(オシャベリ)+女(クール)、同じくテーブル席男(デカ)+男(チビ)の3組とテーブル席の男1人(ホン)がいて、最後の1人の男以外はずーっとそれぞれ別の話をしゃべっています。
最後の1人の男は本を読んでいて、会話の中にその本の内容がかぶってくる感じで、こちらにもメッセージがあるので、最初から最後まで見る方の集中力が要求される作品だと思います。
だけど、それが面白い!そして快感です。集中すると気持ちよくなることがあるのですが、その感じが見ていて得られました。
最初は描かれている内容を素直にみて、以後はそれぞれの組の会話に特に注目しながら見るといい感じかなと思います。なので、最初の1回+3組の話を聞くで少なくとも4回は見てしまう作品になっています。
でも実際はもっと見ちゃうと思います。ふと、またみてみよう、そう思う作品なのです。
「ペイル・コクーン」のテーマは「記録」だと思うと書きましたが、この「水のコトバ」はそのタイトルのように「言葉」なのかなぁ、と思いました。
そんなわけで、本作のテーマは「言葉」だと思ったので、その部分を特に感想として書きましたが、もちろん映像もいいです。特に「水のコトバ」のシーンの光と質感は素晴らしいです。あと、これは「ペイル・コクーン」でも思ったのですが、音がうまいですよね…。すごくいい効果を出しています。
ちなみに英語版もいい感じですヨ。
さかきけいの感想(ネタバレ含む版)
こちらはネタバレを含んでの感想です。というか、理解の説明というか、です。
(前述とかぶりますが)とにかく登場するキャラクターはずっと3組がしゃべり通しで、メインに映るキャラクターがしゃべる時もその後ろでは他のキャラクターがしゃべり続けています。こうしてしゃべっている言葉がこの作品のテーマなんだと、そんな風にすんなりと受け取りました(メインでの話の裏側で言霊の話をしていたりしますし)。
言葉には魂が宿る、そんな風に昔から言われています。それが言霊ですね。強い思いを持って生み出された言葉は、文字通り生きているのです。
そしてその言霊が絵の魚に宿って言葉の海を泳ぐのかなぁ、って、そんな風に思って眺めてました。だから水音が言葉なのかと…。
言霊が生命あらざる者に宿っているというのが2つ目のテーマっぽいところかとも思いました。だからこそ言霊の宿るのが絵の魚で、そういう存在に一番縁遠そうなのに、一番感じ取っているのがウェイトレスのアンドロイドだったりするのかなー、と、そんな風に理解しました。
まとめ
よく「イヴの時間」に絡めた形で語られることがある「水のコトバ」ですが、単独の独立した作品として非常に楽しめるものです。「イヴの時間」についでとか、そういうのではなくて、濃密な9分7秒を楽しむつもりで見ていただけると紹介対象にチョイスした私はうれしいです。
引用画像について
本稿で掲載した画像は前述「ペイル・コクーン(AVBD-34307)」のDVDより、日本国著作権法の許可する範囲内で引用したもので、著作権等は吉浦 康裕さん他が所有しています。
- そのくらいのころ、私はいったい何をしていたかなぁ、と(遠い目)。
- 自分自身で書いてみたところ、まとまりのない説明文になってしまいまして…。