Intel Curie ModuleのSoCはIntel社外で製造されると考える理由

はじめに

いまさら説明する必要もないかと思いますが、Intel Corporationは世界最大の半導体メーカーです。そのIntelが発表した「Intel Curie Module」に搭載されるSoC「Intel Quark SE SoC」は、Intel自身が製造するのではないか、そんな風に漠然と考えられていることが多いのではないかと思います。しかし、私はいろいろな状況から、Intel Quark SE SoCはIntelではなく、Intel社外、それもTSMCが製造を担うのではないかと考えています。

今回はそんなことについて書いてみたいと思います。

これまでのIntelの発表とIntel Curieの発表

これまで、Intel Quark SoCとIntel Galileo Development Boardの発表およびIntel Edisonの発表では製造に使用するプロセス技術について最初から言及がありました。これがIntelの発表としてあまりも自然であったため、そのことに注目が集まらなかったのは当然かもしれません。しかし、Intel CurieとIntel Quark SE SoCではこれがありませんでした。

これから予想される事態は2つです:

  • Intelの保有する工場で製造するが、まだ製造プロセスが決まっていない。
  • Intel社外の工場で製造するため、具体的な発表を控えたい。

私はこのうち後者であろうと考えます。というのも、Intel Curieのお披露目をIntel CEOのBrian Krzanich氏が発表した際に、「Intel Curie」を披露しているからです。これがモックアップでない限り、すでにIntel Quark SE SoCのサンプルを製造済みであると考えるべきだからです。

私は昨日、初期のIntel Edisonがモックアップではないという結論を導き出しました(参照:“初期発表時の「Intel Edison」のモックアップ説の一部を撤回”)。同様に、このIntel Curie Moduleと、それに搭載されるIntel Quark SE SoCもモックアップではない可能性の方が高いと考えています。

そう考えると、Intel Curie Moduleに搭載されているIntel Quark SE SoCは現存し、また動作するものであると考える方が合理的であるという結論になります。であるならば、先ほどの選択肢のうち前者では絶対にない(製造しているのに製造プロセスが決まっていないということはありえない)ということになるわけです。すなわち、これはIntel社内の工場での製造ではないだろう、ということになります。

なぜTSMCなのか?

それはすでに、Intel社内で設計されたチップを製造するということについて実績があるからです。その実績とはコードネーム「SoFIA」と呼ばれる製品群です。

このSoFIAはコードネーム「Silvermont」アーキテクチャーのAtomを1モジュール2コア単位で搭載したTSMCで製造されるSoCで、1モジュール2コアのIntel Atom x3-C3130(3G)および2モジュール4コアのIntel Atom x3-C3230RK(3G)とIntel Atom x3-C3440(LTE)があります。これらはいずれもTSMCで生産されており、Intel社内での設計が外部の工場でも製造できるということの実績でもあります。このノウハウを活かし、Intel Quark SE SoCもTSMCで製造されたのではないかと推測するわけです。

Intel Curie Moduleの発表されている仕様は以下のとおりです:

  • 低消費電力、32ビット Intel® Quark™ SE SoC
  • 384 KB フラッシュ・メモリー、80 KB SRAM
  • 低消費電力、統合DSPセンサー・ハブおよびパターンマッチング技術
  • Bluetooth* Low Energy
  • 加速度およびジャイロを備えた6軸コンボ・センサー
  • バッテリー充電回路(PMIC)

これらのうち、メモリー部分、すなわち384 KB フラッシュ・メモリーと80 KB SRAMはIntel Quark SE SoCに内蔵されたものであろうと考えるべきです。というのも、同種のSoCではすべて統合されたものであるからです。それらに対抗するような野心的な製品である、Intel Curie Moduleがこの中途半端なスペック(と同時に中途半端なサイズになる)のチップをあえて別途製造して載せるとは考えられないと思われます。

また、Bluetooth LEに関してもおそらくはIntel Quark SE SoCに統合されているとみるべきでしょう。というのも、TSMCで製造されたSoFIAでは無線部分も1チップに統合されていました。同様に、TSMCでIntel Quark SE SoCを製造するのであれば、それらのIPを用いて統合して製造すると考える方がスマートだからです。その方がTSMCで製造するメリットがより増えます。センサー・ハブについても他のこのクラスのMCU SoCと同様にIntel Quark SE SoCに統合されていると考えられます(これを別チップにするメリットがありません)。

PMICは外付けの可能性もそこそこあります。事実、Intel Edison Compute Module(コードネーム「Bodega Bay」)においてもコードネームMerrifieldには統合されておらず、別チップを採用していました。

センサーはIntelがこれまで生産してきていない分野であるため外付けの可能性が高いと思われます。

一方で、もしもこの仕様のIntel Quark SE SoCをIntelの現状のプロセスで製造するとなると、特にNANDフラッシュ・メモリー部分がネックとなります。今後、いずれかの段階でIntel所有の工場でも生産できるようになり、巻き取る計画もあるかと思われますが(SoFIAもその計画で動いています)、少なくとも現時点では困難でしょう。

これらの状況を元に、各種選択肢を順番に取捨選択していくと「TSMCで製造されると考えるのが自然ではないか」という結論に至るわけです。

まとめ

これまでに発表された情報の範囲とその際の状況、そしてその仕様から類推してみただけで、客観的な証拠があるわけではありません。むろん、独自取材などまったく行っていません。しかし、この考え方自体はそう無理がないのではないかと思います。それほど遠くない将来、Intel CurieとIntel Quark SE SoCの詳しい情報が出てきたら、答え合わせをしてみたいと思います。

参考記事

関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です