はじめに
前回紹介した機種の中から、最後にメイン環境としていたPC-9821Xt/C10Wをまずは使用できるようにしたいと思います。
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手持ちのPC-9800シリーズ各種が動作するかどうかのチェックを行いました。
PC-9821Xt/C10Wの詳しい状況
分解の開始
まずは壊れているのがSCSI-ID 0のハード・ディスク・ドライブ(以下、HDD)の確認が必要だろうと判断し、HDDへ到達すべく分解を開始しました。マニュアルは本棚に入れていた関係で、パソコン系の荷物とは別の段ボール箱の中に入っており、今回の作業を行うまでの間に発見することはできませんでした。
Webをいろいろと検索してみたのですが、具体的な分解手順を見つけられないまま、分解を開始しました。
まずは、本体背面から外側のプレートを締めているネジを外すことにしました。5本のネジを外して、プレートを後方へ向けて引っ張ってみたところ、無事外すことができました。
さらに前面のフェイス・プレート(プラスチック製)を外そうとしたのですが、うまくいきません。観察をしてみたところ、正面から向かって左側、CD-ROMドライブのやや下のあたりにネジ止めがされていることがわかりました。こちらのネジを外して前面からフェイス・プレートを外すことに成功しました。
続いてHDDを押さえている、前面のプレートを外します。このプレートは7本のネジで固定されています。すべてのネジを外すと、フロッピー・ディスク・ドライブを搭載したプレート部分を支点とした、はめ込み式のこのプレートを外すことができます。
SCSI ID-0のHDDの状況確認
プレートを外すことで、SCSI ID-0のHDDへ接続されているケーブルに到達することができましたので、電源ケーブルとSCSIの信号ケーブル(フラット・ケーブル)を取り外します。ここまでの間にほかの電源あるいは信号ケーブルは一切外していません。そこで、この半分分解した状態で電源ケーブル、ディスプレイ・ケーブル、キーボードを接続して電源を入れてみました。
すると、通常の待ち時間でHDDメニューが表示されることが確認できました。故障しているのは、このSCSI ID-0のHDDであることが確定しました。
そこで、このHDDを取り外し、他の代替HDDに取り換えることにしました。
外し方は、向かって左側に1本のネジ、さらにHDDの奥側に右側のフレームに1本のネジで止めてあります。向かって左側のネジは普通に外すことができます。向かって右側のフレームに止めてあるネジは向かって左側からHDDとHDDの冷却ファンの隙間からドライバーを差し込んで外します。これは実際にそのつもりで見てみると、該当するネジが目視できるかと思います。
ちなみに、このHDDはNECのラベルがついていますが、実際にはSeagate製のHDDです。よく見ると「SEAGATE OWNS MORE THAN 400 U.S. PATENTS.」とラベルに印刷されているのが確認できます。
代替HDDをどうするか?
当時の大容量HDDは、1GB~2GB程度、翌年にリリースされたドライブでも4GB程度です。しかし、現代のHDDは少なくとも数百ギガバイトはあります。そして、接続方式も当時のSCSI-2やUltra SCSIのNarrow(8ビット)ではなく、Serial ATAです。これが仮にSCSIに接続できたとしても、当時のBIOSやOSは現代のような大容量のHDDを扱うことはできません。
そこであれこれ考えたのですが、手持ちのPCパーツにIBM製のDNES-309170というHDDが多数あるのを思い出しました。余談ですが、私はこれを10台以上持っています。そこで、このUltra 2 Wide SCSIのこのHDD(SCA接続)を転用してみることにしました。
IBM DNES-309170 SCAをSCSI-2 Narrowにできるか?
SCAはSingle Connector Attachmentの略であり、80ピンで構成される活線挿抜に対応した、主にサーバー向けのHDDのインターフェイスです。現存するSCAはほぼLVDで、今回のHDDも同様です。LVDはLow Voltage Differentialの略であり、この言葉が示すように低電圧による差動信号による動作を意味します。
これはそれまでの一般的なSCSIのS/E(Single Ended)とは互換性がないものです。しかし、一般的にLVD対応機器はS/Eにも対応しており、接続と設定さえ行えば問題なく使用できハズというのが共通認識でした。
そこで、今回はこの大量にストックのあるIBM製のDNES-309170(9.1GB)をSCSI Narrowに変換する変換コネクターを介して接続することにしました。
SCSI Narrowへの変換とPC-9821Xt/C10Wへの接続
方針が決まれば、変換のためのコネクターを選択する必要があります。検索をしてみたところ、COMON(カモン)のSCA80ピン→50ピン変換アダプタ メス が広く安価に出回っていることが確認できました。これを入手して試してみることにしました。
これを某店で入手し、早速DNES-309170に接続し、同HDDのモードをジャンパー・ピンでS/E Modeに設定し、さらにSCSI IDを0にしてPC-9821Xt/C10Wに接続してみました。なお、この変換ボードによって、ややHDDのコネクタ部が膨らみを持つことになりますが、今回テストした範囲では特に問題はありませんでした(ふたを閉めるところまでは試していません)。
そしてPC-9821Xt/C10Wのスイッチをいれてみたところ、順調にHDDメニューが表示されました。しかし、SCSI IDを0に設定したDNES-309170は表示されません。初期化を行っていないことやパーティション情報を書き込んでいないことが原因かと考え、HDDメニューからSCSI ID-1のWindows 95を起動させて、F8キーを連打して起動メニューを出し、「Safe モード(コマンドプロンプトのみ)」を選択して、MS-DOS 7を起動し、さらに「A:\WINDOWS\COMMAND
」ディレクトリーに移り、「DISKINIT.EXE
」を実行してみましたが、残念ながらSCSI ID-0(SCSI固定ディスク ID=0)が表示されません。
該当のHDDの故障を疑い、ストックの中のHDDをいくつか付け替えてみたのですが、結局うまく認識されることはありませんでした…。
どうやら、このHDDのストックは今回の件には役立たないであろう、ということが判明しました。
まとめ
今回のチャレンジでは、SCSI ID-0のHDDに問題が生じているということ、そしてこのHDDを取り除くことで正常な速度でHDDメニューが表示されることがわかった一方で、手持ちのIBM製DNES-309170は今回の用途では使用できないということが判明したところまで作業が進みました。
次回は、このIBM製のDNES-309170が使用できないことを前提に、PC-9821としてMS-DOSを使用する方向での検討をしてみたいと思います。
SCA80-50コネクタをどこで購入しようかと探しているうちに本ページを拝見させていただきました。
DNES-309170が認識されなかったとのことですが、原因はターミネータが装着されていないことにあります。
DNES-309170のPDFマニュアルの1ページ目のイントロダクションに
DNES-309170
– Fast-40/20 LVD/SE Multi-mode 80-pin SCA-2 (without SCSI terminator)
「without(なし)」と書いてありますので、SCA80-50コネクタで50ピンに変換した後、ターミネーションしなければSCSIコントローラーからは認識されません。
内蔵50ピンタイプの貫通型なので
https://www.ebay.com/itm/50pin-wire-Internal-Male-Female-cable-cord-Terminator-SCSI1-2-HD-HDD-CD-Drive-/302919519000?hash=item4687690b18
この商品になりますが、うちの店舗ではSCA80-50コネクタに
ボーンズ社の抵抗アレー
4610X-101-221LF
4610X-101-331LF
を直接ハンダ付けして、古いMac用のSCSI50ピンHDDとして使っています。
配線は以下の通りです。
http://www.marushin-web.com/se30_6.html#SCA80-50
***
うちのサイトもパソコン修理業のかたわら、Old Macユーザーとしてどうやって周辺機器を維持管理するかという個人的課題から書き始めたもので7年目に入っています。
WindowsとLinux関連のページは、仕事上のメモ代わりに作っています。(OSが広範囲で覚えきれないため)
これからもいい記事を書いてください。
きっと誰かの役にたっていることはまちがいありません。
非常に遅い返信となり恐縮です。
すでにご覧になられることはないのかもしれないとは思いますが、情報として補足しておくことはこのコメントの後に当ページをご覧いただく方々に情報を提供するという点において意味があるかと思いコメントいたします。
本機PC-9821Xt/C10WのSCSI内部接続は3台のハード ディスク ドライブ ベイを経由したのちに最終的に4倍速のCD-ROMドライブに接続されており、そこで終端抵抗が設置される構造となっています。
このため、交換前のナローSCSI対応のハード ディスク ドライブ全台が正常に認識され、使用できていたということとなります。
このことからDNES-309170が認識されず、正常に動作しなかったことは50ピン変換後の終端抵抗が原因となる事象ではないと判断いたしました。
ここからは余談です。
外部側は本機付属のフロッピー ディスクにより、終端抵抗のON/OFFを設定するようになっています。
通常は何らかの機器を接続することが多く、その終端抵抗によってターミネーションがされるため、あまりON/OFFを意識することはないかもしれませんが、すべての外部機器を外す場合にはONに設定する必要があることを理解しておくことはとても重要です。