はじめに
以前、引越しについて書いた際にも言及したのですが、私の持ち物には古いパソコンが含まれます。これらと、それほど古いと思っていなかったけれど、実際に考えてみれば古いPC-9821Xt/C10Wを含めて、また使用したいと考えています。
これを実際に行っていく状況をレポートするともに、皆様からアドバイスや突っ込みを受けつつ、修理/復活させていければと思います。
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PC-9821Xt/C10Wをチェックしたところ、HDDのSCSI ID-0のものが動作していないことが確認でき、代替HDDとしてSCA-80コネクター採用のUltra 2 Wide SCSI HDDを代替ストレージとしてしようとしましたが…。
ディスプレイについて
私が使用していた三菱電機製RD-17GIIはすでに故障しており、今回の引越しで処分しました。いろいろな思い出のあるディスプレイだけに、捨てる決断をするまでに数年を要した1台です。
というわけで、今回、PC-9800シリーズの状態確認を始めるにあたり、まずは新たにPC-9800シリーズで使用できるディスプレイを入手する必要がありました。いろいろと検討しました。
昨年、コンシューマー向けのディスプレイ事業から撤退した三菱電機の一部製品が、スペック上はサポートしてないはずの水平同期周波数24kHzをサポートしているということで、こちらの流通在庫にしようかと思ったのですが、現在はプレミア価格でなかなか買いづらい価格となってしまっています。
物はいいのですが、いずれにしてもPC-9800シリーズの動作検証後に補修部品を手配しないとならないであろうことが明らかであり、なかなか高価な製品に手を出すには抵抗がありました。また、PC-9800シリーズで使用することを前提とするのであれば、明らかにオーバースペックである、ということもあり、この選択肢を取ることはあきらめました。
その後いろいろと見て回ったところ、アイ・オー・データ機器のディスプレイ(一部を除く)が、正式にPC-9800シリーズに対応していることに気づきました。
ここでもFull HD対応の16:9ディスプレイにするかスクエア・タイプのディスプレイにするか少々悩んだのですが、主たる使用目的がPC-9800シリーズでの使用であることを考え、スクエア・タイプのディスプレイを選択することにしました。選んだのはスクエア型のモデルで最も大きな19型のLCD-AD191SEBです。価格は約15,000円でした。
現状確認
先週末に状態を確認したPC-9800シリーズについて、どのような状況下を説明したいと思います。
PC-9801ES2
これは比較的大事に扱ってきており、私が30行BIOSの開発を引き継いだ直後に作業を行っていた思い出深い1台です。
電源を入れる前に目視で基板の状況を確認するためにカバーを外してみたのですが、電源に1か所腐食が見られました。これは電解コンデンサーが液漏れを起こした際につくもので、おそらく電源が死んでいるだろう、と予想されました。
さて、実際にはどうだろう。ということで、電源を接続し、キーボードを接続し、ディスプレイを接続し、電源をボタンを押し込みました(物理スイッチで押し込み式です)。予想通り、電源は入りませんでした。
PC-9801EX4
この機種は前述のPC-9801ES2と同時に発表された製品で、ESがCPUにi386SX 16MHzを採用しているのに対し、EXは80286 12MHzを搭載しているのが最大の差です(FM音源の搭載あり(EX)・なし(ES)という差もあります)。メイン・ボードの構成は結構違うのですが、周辺機器はほぼ同じものが使用できます。
これも通電前にカバーを外して、内部の状況を目視で確認しました。特に腐食や電解コンデンサーの異常は見られませんでした。ただ、以前動作確認を行った際に動作不良が認められたフロッピー・ディスク・ドライブ周りの分解確認後のネジ締め不足があったため、手持ちのねじで締めなおしました(電源スイッチがフロッピー・ディスク・ドライブを格納する金具の支えを必要とするため、締めなおす必要があったのです)。なお、今回見るまで特に意識することはなかったのですが、このPC-9801EXのCPUはIntel製ではなく、AMD製のセカンド・ソース品を採用していることが確認できました(80286の各社セカンド・ソース品はIntelからの正規ライセンス品で互換性に問題はありません)。
今回は正常起動に期待が持てそうだと思いながら、電源ケーブル、キーボード、そしてディスプレイを接続してスイッチボタンを押しこみました。
すると、「ぴぽっ」と音がスピーカーから聞こえて、液晶モニターにRAMチェックが表示されました。ハード・ディスク・ドライブやフロッピー・ディスク・ドライブが無効なため、しばらくして「N88-BASIC(86)」、通称ROM-BASICが起動しました。ちょっといじってみたのですが、正常にBASIC命令が実行できました。
フロッピー・ディスク・ドライブが不良ではあるものの、他は問題がなさそうです。
PC-98DO
この機種は特殊な構成で、PC-9801VM21とPC-8801MHの仕様エッセンスを1台に凝縮したものです。今回はPC-9801側のみを見てみることとしました。
チェックも3台目ということで、今回は中身を見ることなく、電源ケーブル、キーボード、ディスプレイを接続して電源を入れてみました。結果、問題なく起動してROM-BASICが立ち上がりました。ただ、表示がグリーンで「How Many Files?」のあとに⏎キーを押すと、「Ok」プロンプトが表示される前に固まってしまいます。
そういえば、PC-9800シリーズには「メモリスイッチ」というものがあったな、ということを思い出し、物理的な「ディップスイッチ」の構成を変えて、「メモリスイッチ」を初期化するようにしたところ、正常にROM-BASICが動作するようになりました。
この機種は今から17~8年前に最後に起動させた際に何の問題もなかったので、手持ちの5インチ・フロッピー・ディスクからおもむろに日本ファルコムの初代イース(当然PC-9800シリーズ用、残念ながら公式の製品ページ消失)のディスクを取り出して挿入してリセット・ボタンを押してみたところ、なんと問題なく起動しました!!
お~、懐かしい…。女神フィーナが映し出されます。⏎キー(RETURNキー、Enterキーに非ず)を押して先に進むと最初の町が表示されます。あ~、これ、本当に懐かしいです。おもむろにロードをしてみると神官ダルク・ファクトの前に出ました。完全に動いています。
PC-98DOは完全動作品であることがわかりました。
PC-9801VM2 その1
さて、私の記憶では1台のみのはずなのですが、なぜか2台手元にあるPC-9801VM2の1台目です。
この機種も中を見ることはしませんでしたが、拡張スロットに挿されているボードは確認しました。こちらには256KB(単位に誤りはありません!当時はこういう単位だったんです)のメモリ・ボードが挿入されています。このままの状態で電源ケーブル、キーボード、ディスプレイを接続して電源を入れました。すると、電源が入ってLEDは点灯するものの、うんともすんともいわず、その先に進むことはできませんでした。ディップスイッチの設定をいろいろと変えてみても状況は変わらず。どうも、電源以外のどこかが故障しているようでした…。残念です。
PC-9801VM2 その2
続いて同じ機種です。こちらには特にボードは何も挿入されていません。
さっそく電源ケーブル、キーボード、ディスプレイを接続して電源を入れてみました。こちらも電源のLEDは点灯するものの、ディスプレイには何も表示されません…。しらばくディップスイッチをあれこれいじったりしながらリセット・ボタンを押すなどして反応を見ていたのですが、あるときディスプレイに対応周波数ではない旨の表示が出ました。
…。ということは、少なくとも表示はされないにしてもディスプレイに対して何らかの信号が出ているということです。ITF(Initial Test Firmware)による初期化が行われているという想定をすることができます(ファームウェア≒いわゆる広義の「BIOS」のうち、初期化とテストを専門に行う部分をITFと言います)。
さらにディップスイッチをあれこれいじっていると、ROM-BASICが起動するようになりました。ただし、表示は40桁×25行です。ディップスイッチは80桁×25行に設定しているつもりなのですが、どうしてもこの表示しか行うことができませんでした。ディップスイッチに接触不良が発生している可能性がありそうです。
それはともかく、です。40桁×25桁が表示されるのです…!!
液晶ディスプレイ側でステータスを表示させたところ、水平同期周波数は16kHz、垂直同期周波数は62Hz、モードは720×240と認識されていました。なんと、このディスプレイ。スペック上の下限は水平同期周波数は24kHzなのですが、実際には16kHzもサポートしているようなのです。もしかすると、15kHzくらいはサポートしているのかもしれません。だとすると、シャープのX68000シリーズの表示用にも使用できるかもしれません(筆者は試しておらず、また保証できません)。※1
ちなみに、この機種は起動時に「ぴぽっ」とはいいません。
PC-9821Xt/C10W
私にとって最後のPC-9800シリーズです。そして、今回の本命です。90桁BIOSはこの機種上で開発を行いました。
最後に使っていただけにいろいろなボードや機器を追加しており、RAMは標準16MBに32MB×2を2セット追加して合計144MB、デフォルトのSCSIボードにAdaptec AHA-2940N相当、ビデオボードに載せ替えたPermedia 2搭載ボード、NICに追加したアイ・オー・データ機器のDE21140搭載ボードLA/TX-PCI、RS-232ボード(アイ・オー・データ機器RSA-98III)、PC-9801-86ボード、MIDIボード(ローランド製でCバス用、型番現状不明)、さらにSCSI対応のハード・ディスク・ドライブが3台、同CD-ROMドライブが1台接続されています。
この機種は接続する必要のあるケーブルが多いです。例えば、PCIスロットに挿したビデオ・ボードの出力を本体側のビデオ入力に接続したり、Cバスに挿したPC-9801-86ボード(通称86ボード)からの出力を本体側のLINE-INに接続したりする必要があります。これらを接続したうえで、電源ケーブル、キーボード、ディスプレイを接続して電源ボタンを押します。
「ぴぽっ」っと音がして、液晶ディスプレイにはRAMチェックの状況が表示されます。
その後ハード・ディスク・ドライブに格納されたメニューが表示されるはずなのですが、なかなか表示されません。数分放置後にようやく表示されたメニューには3台分の表示がなされるはずのところ、2台分しか表示されません。表示を見る限り、MS-DOSをインストールしたSCSI ID-0のハード・ディスク・ドライブ、すなわち最初から搭載されているドライブが故障してしまったようです。ID-1のWindows 95とID-2のWindows NT Workstation 4.0は選択可能なのですが、ID-0が見えないことによってドライブ・レターがずれてしまい(PC-9800シリーズは起動ドライブ基準でドライブ・レターが変更となります)、正常に起動させることができませんでした。
続いてフロッピー・ディスク・ドライブはどうだろう、ということで、いくつかのディスクを挿入して起動させてみたのですが、残念ながら何も起動させることはできないまま「Disk i/o error」との表示をむなしく見るだけでした。このようにフロッピー・ディスク・ドライブも故障しているようです。
さらに、この機種に接続して使用していたMOディスク・ドライブを外付けで接続してターミネーターを付け、MS-DOSとWindows 3.1が記録された起動可能なMOディスクを挿入してみたのですが、こちらからの起動を行うこともできませんでした。残念ながらMOディスク・ドライブも故障しているようです。
まとめ
今回、動作を確認することができた機種と、別途起動できることを確認したPC-9821Ld/260を含めて、私の手持ちでは以下の機種が起動可能であることになります:
- PC-9801EX
- PC-9801VM2
- PC-98DO
- PC-9821Xt/C10W
- PC-9821Ld/260
PC-9801EXについては、PC-9801ES側に部品を移植することを考えています。PC-9801ESを起動させることができるようになることで、アセンブラーによる開発環境を復活させることができる可能性があることが要因です。このためには今回接続していないSCSIボードとSCSIハード・ディスク・ドライブが動作するという前提が必要です。
PC-9801VM2はディップ・スイッチの物理的な修理が必要ということと、仕様上の制限が多いことから、優先順位は低めで対応していこうと考えています。
PC-98DOはそのままで完全に動作しているので、オールド・ゲームのプラットフォームとして活用していく方向性を検討したいと考えています。
PC-9821Xt/C10Wは、プログラム開発用のプラットフォームとしての位置づけも回復させたいと考えており、今回の復活プロジェクトとしてはメインに据えるものと考えています。必要な補修パーツとしては、OSのディスク(メディア問わず)、1GB程度のハード・ディスク・ドライブあるいは代替デバイス、フロッピー・ディスク・ドライブあたりが必須であろうと考えています。さらに、できればCD-ROMドライブとMOディスク・ドライブの調達が必要となりそうです。
急進的に進めるのは難しいにしても、それぞれのポイントを順番に、そして確実に解決していきたいと思います。
ぜひ、アドバイスや物品の入手先の情報等がありましたらコメントに投稿していただければと思います。みなさまのご協力をお願いいたします。
- 2014年7月20日追記:X68000の15kHzモードでは512ラインの出力があるのですが、このディスプレイは最大で480ラインまでしか扱えないため、一部画像が切れるという問題が発生します。このため、X68000用にこのディスプレイを使うことは事実上できないと考えた方がよいでしょう。