はじめに
最近のパソコン向けのグラフィックス・チップのシェア、すなわちAMD、Intel、NVIDIAの近況や統合GPU(Integrated GPU/iGPU/APU)と独立GPU(Discrete GPU/Dedicated GPU/dGPU)がどのような傾向にあるのか知りたいと思い、調べてみましたので、その内容をシェアしたいと思います。
トータルのマーケット・シェア
まずは、すべて合算されたトータルのシェアを見てみたいと思います:
Market share this quarter | Market share last Qtr | Unit Change Qtr-to-qtr | Share Difference Qtr-to-qtr | Market Share last yr. | |
---|---|---|---|---|---|
AMD | 16.7% | 18.3% | -18.2% | -1.6% | 20.6% |
Intel | 66.8% | 65.1% | -7.9% | 1.7% | 60.8% |
NVIDIA | 16.6% | 16.6% | -10.4% | 0% | 18.2% |
Others | 0.00% | 0.07% | -100.0% | -0.07% | 0.360% |
出典:Intel gains, Nvidia flat, and AMD loses graphics market share in Q1 – Jon Peddie Research
市場全体が縮小しているようにも見えますが、前クォーターがQ4のホリデーシーズンであることを差し引くと、いつも程度とみることができるのではないかと思います。その中で、AMDがシェアを落とし、その分がIntelに入っており、NVIDIAは横ばいのシェアとなっています。結果として、AMDとNVIDIAのシェアがほぼ拮抗し、IntelがiGPUでシェアをガッツリ持っていく形となっています。
注目すべき点は、最後の過去1年間のシェアと比較したときに、AMDとNVIDIAのシェアがそれぞれ-3.9%、-1.6%と減少しており、その分がIntelに+6%入っています。これは今クォーターの流れとも一致しており、このところの流れなのかもしれません。
そして、その他のチップ・メーカーが0.00%と、数字として出てこないレベルまで落ちてしまっています。
独立GPUのマーケット・シェア
続いて独立GPU(GPUボード)のシェアを見てみます:
Market share this quarter | Market share last quarter | Market Share last year. | |
---|---|---|---|
AMD | 35.0% | 35.0% | 35.6% |
Matrox | 0.0% | 0.1% | 0.1% |
NVIDIA | 65.0% | 64.9% | 64.2% |
S3 | 0.00% | 0.05% | 0.1% |
Total | 100.0% | 100.0% | 100.0% |
出典:Add-in board market down in Q1, Nvidia holds market share – Jon Peddie Research
過去1年間、前クォーター、今クォーターを比較すると、あまり変動なくAMDが35%前後、NVIDIAが65%前後で安定しています。MatroxとS3はほぼゼロという状況で、これはこれで安定しているといえるでしょう。
統合GPUのマーケット・シェア
Jon Peddie Researchは同じ時期の統合GPUについての発表をしていないようですので、引用した2つのデータから計算してみます:
Market share this quarter | Market share last quarter | Market Share last year. | |
---|---|---|---|
AMD | 11.9% | 13.2% | 15.8% |
Intel | 88.1% | 86.8% | 84.2% |
NVIDIAは統合GPUがないので、AMDとIntelだけです。AMDのトータル・シェアから独立GPUのシェア分を除き、AMDとIntelで100%になるように計算しました。こちらはベースとしてCPUのシェアとの連動があるので、Intelがだんだんシェアを伸ばす形となっています。
このペースに変化がないとすると、次クォーターにはIntelが90%になるかもしれません。
AMDのAPUとdGPUを分けたトータル・シェア
これまでの結果をもとに、トータル・シェアのからAMDの独立GPU(dGPU)と統合GPU(APU)に分けたシェアを計算してみます(この計算は前述の計算結果をそのまま使用しているため、AMDの値は最大で0.1%前後の計算誤差があります。それをご理解のうえご覧ください):
Market share this quarter | Market share last quarter | Market Share last year. | |
---|---|---|---|
AMD(APU) | 7.7% | 8.4% | 9.1% |
AMD(dGPU) | 8.9% | 9.8% | 11.4% |
Matrox | 0.0% | 0.1% | 0.1% |
NVIDIA | 16.6% | 16.6% | 18.2% |
Intel | 66.8% | 65.1% | 60.8% |
S3 | 0.00% | 0.05% | 0.1% |
AMDはAPUとdGPUに分割される仕様の違い、例えばHSA(Heterogeneous System Architecture)がありますが、(APU全てがサポートしていると仮定して)トータル・シェアが7.7%となると、なかなかソフトウェア・ベンダーのサポートを受けるのは難しいのではないかと思われます。
まとめ
トータルと統合GPUではIntelが絶大なシェアを持ち、独立GPUではNVIDIAがAMDに対して8割以上多いシェアをとっていることがわかりました。各数字はワールド・ワイドのシェアなので、日本国内はまた違った感じかと思いますが、全体像をつかむためのデータとしては十分ではないかと思います。
個人的には独立GPU(ボード)では、NVIDIAとAMDのシェアはそう変わらないのではないかと思っていたのですが、実際にはNVIDIAが相当に優位な位置にいることをデータとして理解し、認識を新たにしました。また、一般的なパソコンでのゲーム・プレイヤーは統合GPUと独立GPUのどちらの使用者が多いのか、というのも気になってきました。
ちなみに私個人の現役パソコンの中でのGPUシェアは、Intel:0%、AMD:50%(APUとiGPUの合計2台)、NVIDIA:50%(ボード2枚)です。
動作テスト用の環境として、IntelのiGPU環境を用意する必要がありそうです。