はじめに
インテル Galileo 開発ボードにおいて、無線LAN(Wi-Fi)とBluetoothを適法に使用する方法について考察と実践をしてきましたが、最後に懸念について書いてみたいと思います。取り越し苦労かもしれませんが、真面目に考えるとどうしても残る懸念事項があるのです。
なお、考察→実践をインテル Galileo 開発ボードをベースとして考えてきたため、その線上のタイトルや位置づけになっていますが、懸念の内容はLinuxやFreeBSDなどのオープン・ソース系のOSで法的にどのような位置づけになるのか、ということで、インテル Galileo 開発ボードのみに限定される話ではありません。
本当に適法なのだろうか?
前回の「実践」を書きながら、「本当にこれは適法なのだろうか?」という懸念が私の中にありました。なぜかと言えば、確かに該当するデバイスは「技適」マークのある認定製品ではあるものの、ドライバーは認定を受ける際のものと異なっているからです。該当記事中で取り上げた株式会社バッファローのWLI-UC-GNMの対応OSは「Windows 7/Vista」の64/32ビット版と「Windows XP」の32ビット版です。これらの上で動作するドライバーで認定を受けているであろうことは明らかだといえるでしょう。
さらに、該当Linuxディストリビューションで使用しているチップを駆動させるためのファームウェアが認定を受けた際と同じものであるかどうかも明らかではありません。
これらを考慮すると、必ずしも「適法である」と言い切れないのではないか、という懸念を拭い去ることができなかったのです。
このことは結構根深い問題で、チップ・ベンダーと製品ベンダーが同一で、その製品ベンダーが該当OS(この場合はLinux)のドライバーを提供している場合を除いて、もしかすると認定の条件と一致していない可能性が残り、結果として適法ではない状態にある可能性があるわけです。
例えばインテル株式会社の製品であればチップ、ボード、ドライバーのすべてが(親会社のIntel Corpを含むとして)同一の提供元となっており、Linux上で使用する場合にも問題がないと推定することができます。
しかし、今回の株式会社バッファローの製品を使用したケースでは、チップはRalink Technology(現・MediaTek)、製品は株式会社バッファロー(技適取得)、ドライバーは第三者(Linuxカーネル開発者あるいはコントリビューター)、ファームウェアはRalink Technology(現・MediaTek)提供となっています。このケースでは株式会社バッファローが受けた認定がこの構成でも有効なのかどうか、ということになるわけですが、正直誰にもなんともいえないと思いませんでしょうか?
たぶん、これってグレーゾーンですよね…?
というのが、この件で私が抱いた懸念です。
※上記の構成例はあくまで例えです。これが不適法であるということを主張するものではありません。※1
まとめ
実際にこの懸念が当たっていた場合、LinuxやFreeBSDなどのオープンソース系で使用できる無線LAN製品は、該当デバイスのメーカーがサポート対象としている場合に限定される恐れがあります。というのも、該当するデバイスの認証を受けた会社が公式サポートする以外のOSでデバイスを使用することが多くの製品※2でできなくなることを意味するからです。
各国ごとに電波に関する法令は異なります。それは平均的な居住空間の大きさや構造、都市の人口密度などによっても最適値が異なる関係で、国ごとの事情によって法令が異なることはやむを得ません。例えば、日本国とアメリカ合衆国では無線LAN(Wi-Fi)で許容される最大出力が異なります(アメリカ合衆国のほうが出力が高い)。こういった差異がある限り、技適マークのような運用は必要です。※3しかし、デバイスの動作のうち、ソフトウェアによって制御される比重が高まっている現状では、今回のようになかなか、なんともいえない不便さが伴います。※4
何とかいい落としどころがあるとよいのですが…。妙案は思い浮かびません。どうしたらよいのでしょうか…?
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- Ralink Technology(MediaTek)のファームウェアがWindowsとLinuxで異なるかどうかなども確認していません。本当に例え以上の意味はありません。
- 一部の製品は構造的に無線部がホスト(パソコンなど)から独立している構造を持つものがあり、それらはどのようなOSやドライバーでも問題なく使用できるでしょう。
- 有名なところでは、CEマーク、FCCマークなどをご覧になったことがある方も多いでしょう。
- この例えに沿えば、Ralink Technology(現・MediaTek)のファームウェアとLinuxカーネル開発者/コントリビューターのドライバー、そして株式会社バッファローのデバイスの組み合わせによる動作は、いったいどこの国の規格と法律に沿っているのか、という疑問が生じえます。