“Windows・AndroidのデュアルブートPCがOSメーカーの圧力で発売中止に – GIGAZINE”という記事を読んでいて、根拠が希薄で、また不適切な理解によって結果として誤ったことを書いているように思えました。以下に少し引用します:
新しい報道によると、発売中止の主な原因はGoogleというよりも、むしろMicrosoftが「デュアルOS製品はサポートしない」という新しい方針を明らかにしたことにあるそうです。
Microsoftとデュアルブートに関しては、Windows 8搭載PCのOEMメーカーに対して「Designed for Windows 8」ロゴをつける代わりにセキュアブート機能を有効にするよう指導していたという話も出ています。Microsoftは否定していますが、セキュアブートを有効にするとUnified Extensible Firmware Interface(UEFI)の仕様上、キーコードのないLinuxではブートできなくなり、「Windows 8とLinuxのデュアルブート」が不可能になります。
Microsoftがx64版においてUEFIとSecure Bootを「Designed for Windows 8」の要件にしているのは事実です。UEFIに登録されたキーと起動対象のキーが一致しないと起動しないのがSecure Bootです※1。UEFIにどのキーを登録するかはメーカーが決めることで、ほとんどのメーカーはWindows(Microsoft)のキーを入れています※2。一方でLinuxディストリビューションは、こういったメーカーがキーを登録することはまずなく、結果としてそのままではSecure Bootでは起動できないことになります。※3
UEFIには、オプションでキーをユーザーが追加登録することができるようにすることもできます。この機能を採用するか否かは、やはりメーカーの裁量です。他のキーを追加したい場合には、ユーザーはこういった機能が搭載された製品を選ぶことになるでしょう※4。
(このASUSの製品ではUEFIにWindowsとAndroidをどのように同じハードウェアに入れているのかが判然としないのですが)以上を踏まえると、Microsoftにしてみれば「Designed for Windows 8」要件に合致していない製品について「サポートしない」とするのは、元々の規定通りであり、特別な圧力をかけているというのは無理があると私には思えます。
サポートのない状況下で、メーカーが独自の保証をして製品を出すか出さないか、という判断になるだけでしょう。そして、今回は後者の決断をしたということになっているように見えます。
個人的には、Google側の方の対応も気になります。サポートしないとベンダーが言っているマシンにWindowsを入れることと、Google PlayなどのGoogle製アプリが存在しないAndroid OSを入れることでは、後者の方が影響がきわめて大きいからです。こちらの方がとん挫すると製品の魅力が半減しますので…。
動画を見る限り短時間で切り替えられているので、どちらかのOSをベースにもう一方のOSを仮想環境内に展開しているとも考えられます※5。仮想環境内に入れられるOSベンダーはやはりいい顔しないと思うんですよねぇ…。※6
まぁ、この記事だけでは何とも微妙に二大OSベンダーを叩くことありきで書かれているだけのように私には読めましたので、なんとも言えない感想を抱きました。
- 起動対象が確かに認証済みのOSであることを検証するのがSecure Bootですから、これは目的に沿った正しい動作です。
- メーカーは必要に応じて別のキーを併せて、あるいは単独で登録することもできます。
- このあたりの情報については“FedoraでUEFIセキュアブートを実装すること – 本の虫”が、日本語でわかりやすく状況を説明しています。
- そういう製品が実際に存在するかどうかといった問題がありますが、それは仕組みの議論とは別の議論となるでしょう。
- あるいは両方とも仮想環境内にあり、第3のOS、あるいはハイパーバイザーが動作している可能性もあります。
- 事前に検証済みである場合を除いて、仮想環境内で動作するOSの正式なサポートは難しいので、これは仕方のないところです。