はじめに
IntelがIA-32の64ビット拡張を実施すると決めてから、現在のIntel 64に名前が落ち着くまでの間に4つの名称がありました。それぞれ、なんという名前で、いつ発表されたのか、そんなことがちょっと気になったのでまとめてみました。
IA-32eアーキテクチャと64-bit Extension Technology
最初に伝わってきた名称は「IA-32e」だったのではないかと思います。「IA-32をちょっと64ビットに拡張した」、そんなニュアンスを感じるなぁ、と思った覚えがあります。この名称が伝えられたのは、IntelのWebサイトに掲載された資料からです。
以下に当時(2004年2月18日)の記事「Intel、「IA-32e」64bit拡張はAMD64互換と発表 ~64bit拡張に関する技術情報を公開 – PC Watch」より引用します:
Intelは17日(現地時間)、IA-32の64bit拡張技術(IA-32e)に関する技術情報「Intel 64-bit Extension Technology」を、同社サイトに掲載した。
このように、IA-32eと64-bit Extension Technologyは同時に発表され、同時並行で使われた名前でした。
Intel Extended Memory 64 Technology(EM64T)
続いて登場した名称が「Intel Extended Memory 64 Technology」、略して「EM64T」です。これは前述のIA-32eを実装したIntel Xeonを実際に出荷する際に発表されました。
以下に当時(2004年3月15日)の記事「米Intel,64ビット拡張技術の名称を「Intel Extended Memory 64 Technology」に – ITpro」から引用します:
米Intelはこのほど、既存のIA-32アーキテクチャのCPUに追加する64ビット拡張技術の名称を「Intel Extended Memory 64 Technology」(Intel/EM64T)に決定した。同社は2004年第2四半期中に64ビット拡張技術を実装したXeonプロセッサを出荷する予定で、製品名称は「Intel Xeon processor at 3.20 GHz includes Intel Extended Memory 64 Technology」といった具合になる。
記事にもありますが、64ビットの拡張はメモリに対するものであるという示唆を与えようとする名称ですね。実際に製品に付けられた名称はこのEM64Tからで、前述のIA-32eと64-bit Extension Technologyは技術説明のみで使用された名称という整理ができます。
Intel 64
そして現在使われている「Intel 64」が登場します。この名称が初めて使用されたのは「Core 2 Duo」の発表時で、これはNetBurstアーキテクチャでいったん導入されたEM64Tが「Core Duo(Yonah)」で途絶えた後、再度導入されたタイミングでもあります。
当時(2006年7月27日)の記事「「Core 2 DuoはPentium以来最大の革新」~インテルCore 2 Duo発表会 – PC Watch」から引用します:
64bit機能は従来の「EM64T」から「Intel 64」と名称変更になった。
まとめ
各名称の使用期間をまとめてみましょう:
名称 | 使用期間 | 使用日数 |
---|---|---|
IA-32e / 64-bit Extension Technology | 2004年2月17日 ~ 2004年3月14日 | 26日 |
Intel Extended Memory 64 Technology(EM64T) | 2004年3月15日 ~ 2006年7月26日 | 863日 |
Intel 64 | 2006年7月27日 ~ 現在 | 2612日以上 |
IA-32eと64-bit Extension Technologyは本当に一瞬でしたね。
調べながらIntelの経営陣がIA-32の64ビット拡張をマーケティング上どのように扱うか、まだ決めきれていないうちに技術発表したような印象を受けました(IA-32eはともかく64-bit Extension Technologyからは明らかに64ビットです!という印象を得ますよね)。
結局IA-64を保護するという方向に流れて決まったのがIntel Extended Memory 64 Technology(EM64T)であるように思います。
そしてIntel 64とする段階では、もうIA-64に特別の配慮をしないという意思決定がなされたのではないでしょうか?
個人的な印象では、IA-32e → 64-bit Extension Technologyと短期間に移り変わったと認識していたので、今回調べてみて一つ誤解が減りました。やはりきちんと調べることは大事ですね。