クラウド Watchから「クラウドへのアプローチはAWSともOpenStackとも競合しない ~米VMware パット・ゲルシンガーCEO」という五味 明子さんによる記事を紹介します。
複数記者による囲みインタビューということで、いろいろな質疑応答が掲載されており、どれも非常に興味深く読みました。
私が興味深いと特に思った2つの質疑応答を以下に引用します。
――VMwareはサポートするハードウェアが多いことも支持されている理由のひとつだと思いますが、現在話題になっているARMプロセッサをサポートする予定はありますか。
当面はありません。その理由はARMサーバー上で保護すべきアプリケーション資産が少ないということ、加えて私自身、ARMサーバーの成功に疑念をもっているからです。
モバイルの世界ではARMは大きな成功を遂げています。しかしサーバーとしてモメンタムを形成できるとは現時点では思えない。ARMを核とするエコシステムが周辺テクノロジーを含めて確立する状態には至っていません。もちろん、顧客からの要望が強くなれば対応しますが、いまのところそうした声も聞きませんね。
今、現時点で私としてはこれに同意します。というのも、私にとって、現状ではIA-32系を選択する動機はいくつか挙げることができても、ARM系を選択する動機は希薄だからです。純粋な性能ではHaswellやIvyBridge、SandyBridgeなどのマイクロアーキテクチャによるXeonに劣りますし、省電力分野では前述のマイクロアーキテクチャ製品の低消費電力版やAtomで問題があるわけではありません。リスクをとってあえてARMを選択する理由がないのです。
この状況を打破することができればARMにも目はあるでしょうが、今のところその目は見えていないと思います。
サーバーの世界には、IA-32系以外にも、IBM POWERやOracle/富士通 SPARC、Intel Itaniumなど、いろいろな選択肢があります。が、いずれもIA-32系に比べるとニッチな市場を得る程度にしかなっていません。ボリュームゾーンはあくまでもIA-32系が占めているわけです。これを崩すためには、ハードウェアだけではなく、多くのソフトウェア面での整備が欠かせません。そんなことを考えれば、短期的にARMが伸びると楽観的には見られないのです。
さらに、物理的にはIntelの製造技術は他社の2~3年先を行っています。これを採用し、今年から順次投入されるSilvermontマイクロアーキテクチャを採用したAtomはARM製品よりも高速であるというベンチマーク結果も出回っています。※1
こういったことを加味すると、彼がIntel出身だから言っているわけではなく、実際にこのように考えている・感じているということなのでしょう。
期間中、プレス陣から何度も対AWS戦略について聞かれていたゲルシンガーCEOだが、常にAWSとの土俵の違いを主張し、マーケットシェアの奪い合いになるようなことはないとしている。実際、AWSがユーザー層を拡大したところで、VMwareのユーザーが減ることはあまり考えられないだろう。AWSを無視することはできないが、AWSを意識したマーケティングはしない姿勢を明らかにしている。
これはゲルシンガーさんの回答が興味深いというより、この質問が出るということが興味深く思いました。ゲルシンガーさんの主張は全くその通り、完全に同意できるものだと思います。
- 例えばクライアント側での紹介記事ですが、Wccftech.comの「Intel Atom Z3000 Series “Bay Trail” SOCs Performance and Lineup Detailed – Powered by 22nm Silvermont Cores」という記事(英語)にベンチマーク結果のスライドが含まれています。