はじめに
私は初期のIntel Edisonがモックアップではないかという説を提唱し、それを考慮の前提として先週2本のコラム“「Intel Edison」のSoCはいったい「何」なのか?”と“「Intel QuarkなIntel Edison」と「Intel AtomなIntel Edison」”を書きましたが、その「初期発表時のIntel Edisonはモックアップである」という説の一部を撤回することにしました。
なぜ撤回すべきと考えたか、そのことについて書いてみたいと思います。
モックアップ説が有効である前提条件
そもそもとして、なぜ私が初期のIntel Edisonがモックアップだろうと判断したかというと、
- 会場で動作しているとするデモがあるのにもかかわらず仕様があまりも不明確。
- 報道用写真が切り貼りなどの加工をされている。
- 初期Intel Edisonが見える形で搭載されて動いている写真を確認できなかった。
というところから推測しました。しかし、実際にモックアップだとすると、さらに1つの追加条件が成立する必要があります。
それは、
- モックアップと思われる対象に複数のバリエーションがないこと。
というものです。
1回の発表ために作成する、発表用モックアップが複数バリエーションあるということは、まず考えられないからです。複数あるのであれば、実際に開発を行った結果として複数あると考えるべきでしょう。
複数バリエーションが存在する初期Intel Edison
いろいろと調べていたところ、初期のIntel Edisonには少なくとも2種類が存在していることが明らかになりました。その写真を以下に示します:
両方とも初期のIntel Edisonが発表された「CES 2014」における発表の関連リソースを配布するIntelのページ「Intel at CES 2014 – News Room」からダウンロードできる画像ファイルで、比較しやすいように正面から見下ろす形に加工してサイズをそろえたものです。
左側が切り貼り加工等がされているものです。右側はおそらく切り貼り加工がなされていないと思われるものです。左側のどのあたりが加工されているかというと、「Intel Edison」という白い文字が入っている裏にある黒い集積回路のパッケージと思われる周辺部分から左右に帯状に緑の基板部分までです。それ以外の部分は加工されていないように見えます。なお、下部の伸びているように見える部分は透明な樹脂を通過した光の屈折によるものです。
この2つを見比べると回路パターンが一部異なっているのがわかります。チップ・コンデンサーやチップ抵抗が一部異なる向きになっていますし、さらには右下にあるWi-FiとBluetooth LEの回路と思われる部分(黒いチップの位置と発振器と思われる部品の有無)およびチップ・アンテナの搭載のされ方が完全に違って見えます。
このように、この2つの写真の初期Intel Edisonは異なるリビジョンであり、少なくとも2バリエーションが存在しているとみるのが妥当でしょう。
まとめ
このことから、初期Intel Edisonは単なるモックアップではなく、動作する個体が存在しているのが明らかであると考えるようになりました。このため、すべての初期のIntel Edisonがすべてモックアップであるという説については撤回することにしました。
ただし、CES 2014で発表された際のデモに搭載されていたIntel Edisonが初期Intel Edisonそのものなのかどうかについては、見えたケースがないので何とも言えないため、結論は先送りにしたいと思います。
会場で実際に動作しているとしたデモを展示しつつ、その仕様を黙して語らなかった点、見えるように動作しているIntel Edisonを展示しなかった点を考えると、初期パートナーが使用していたIntel Edisonは初期Intel Edisonではなく、開発プラットフォームとして作成された別のIntel Edisonで動作させていた可能性を否定できないと考えているからです。
報道用の写真が加工されていた理由は謎ですが、よほど写っていてほしくない「何か」が写っていたのでしょうか…? それはそれで気になります。これが動作しているデバイスにおいて初期Intel Edisonを見せられなかった理由という可能性も考えられる…のでしょうか?
いずれにしてもこれらの写真には黒い部分が多すぎます。チップに何かを張り付けて型番等が見えないようにしたうえで透明な樹脂で封止したようです。ところどころに気泡が残っているので生産ラインで作ったのではなく、手作業なのかもしれません。