新世代ゲーム機

はじめに

今回のテーマは「新世代ゲーム機」です。私はあまりゲーム業界に詳しくなく、お恥ずかしい話ですがゲームそのものにも詳しくありません。何しろ先日何かゲームを買おうと思い、秋葉原に出かけていって、いくつかの有名なゲーム店(ゲームに詳しくない私でも知ることができたようなお店を勝手に有名店としています)を4つほど周り、その後地元の大手家電量販店のゲームコーナーにも立ち寄ったのですが、結局何も買わずに(買えずに)帰ってきたほどです。この話はいずれ別のメモとして書きたいとは考えていますが、とにかく私はゲームに関して色々な意味で素人であることはあらかじめ表明しておきたいと思います。

新世代ゲーム機とは

このメモで言う新世代ゲーム機とは、Microsoft の Xbox360 にはじまる、ソニーコンピュータエンタテインメント PLAYSTATION 3、任天堂 Wii の3機種を指します(次世代としないのは既に Xbox360 が発売されているため)。面白いことに、パソコン業界が Intel と AMD の2大ベンダーが同じような方向に向かったのとは異なり、ゲーム業界では3機種がそれぞれ別の方向に進んでいます。これがゲームに詳しくない私の興味を惹きつけています。

3つの新世代ゲーム機

現在最も注目を集めているのはソニーコンピュータエンタテインメントが発売を予定している PLAYSTAION 3 でしょう。私が Blu-ray の支持者だからそういうのではなく、一般のニュースサイトやテレビ番組で最も注目を集めたゲーム機であると紹介されているということに寄ります。これは多分に PLAYSTATION 3 の下位機種の 49,980 円への値下げと HDMI の搭載という電撃的な発表によるものですが、いずれにしても注目を集めたということは事実です。

任天堂の Wii は技術的に大きな飛躍はないものの 25,000 円という価格の安さや、新たなプレイスタイルの提唱、ゲームをプレイする人々を新規開拓しようとする意欲と、それを実現している Nintendo DS シリーズとそれ用ソフトウェアの存在により、PLAYSTAION 3 や Xbox360 のようなハードウェア革新を目指したゲーム機とはまったく異なる期待を集めています。もしもこのハードウェアをリリースするのが任天堂以外であったらなら、業界の誰もが無視するか失敗を確信したかもしれないほどです。

そして既に新世代ゲーム機をリリースし、日本市場では苦戦しているもののワールドワイドで見てみればそれなりの位置を確保したのが Microsoft の Xbox360 です。Xbox 360 の一番の強みは既に発売されており、一定のシェアを持っていることです。日本では実感しにくいそのシェアですが、実際に確保したシェアというものの優位性は実に強いものがあります。

それぞれが語るもの

Wii が目指すのは、ゲームの革新はハードウェアによってもたらされるものではなく本質はゲーム性とソフトウェアによる表現力だというアーキテクチャに基づくものでしょう。そのためには先行する Xbox360 やこれからリリースされる PLAYSTATION 3 ほどのハードウェアスペックを求めないということが一番の方向性の違いだといえます。ゲーム本質を目指すとき、確かにその指摘は説得力を持ちます。前述のように Nitendo DS シリーズで開拓した市場とその成功が、さらなる説得力をもたらしています。そしておそらくはそれは事実でしょう。

これからリリースされる PLAYSTATION 3 が注目されているのは、まだリリースされていない新世代ゲーム機であるということにより醸成された期待感と Blu-ray ディスクに対応していること、ソニーコンピュータエンタテインメントの代表取締役社長兼グループCEOの久夛良木氏のカリスマ性によるところが大きいでしょう。彼は多くの名言と迷言を残していますが、いずれにしても発言力の大きさは誰もが認めるところでしょう。その久夛良木氏は PLAYSTATION 3 について実に多くのビジョンを語りました。正直なところ、(私の見立てでは)多くのビジョンは現在の世界では実現不能なビジョンですが、夢を語るという点については並ぶものがないほどの人物であると評価しています。その中で語られた多くの夢がもたらすエネルギーと、ソニーコンピュータエンタテインメント、東芝、IBM というタッグが開発した Cell というプロセッサの革新性など、PLAYSTATION 3が持つ「未来」として存在感と期待感をひときわ大きなものにしています。さらにスパイスとして、現在のデファクトスタンダードである PlayStation 2 を擁しているという点が効いてきています。

Microsoft の Xbox360 は Windows の流儀をゲーム機の世界に持ち込んだものだといえます。専用の PowerPC カスタマイズの3コア CPU を搭載しているという特徴はあるものの、多くは Windows の世界からゲーム機の世界に持ち込んだものです。Windows を擁する Microsoft は、パソコンの世界に存在するほぼ全てのデバイスとソフトウェアのキー部分を握っており、その中の一つに強力な開発ソフトウェア群があります。私も常日頃からお世話になっている Visual Studio シリーズや、MSDN によってもたらされる良質かつ多量な情報、Windows 向けソフトウェアの開発で得た知識の流用などなど。語りきれないメリットを Microsoft は Xbox360 にもたらすことに成功しています。そして、Xbox360 は必要十分な新世代ゲーム機に必要とされる HD クォリティやネットワーク接続などの要素を全て持っています。さらにすごいのは、それが約1年先行してスタートできているという点です。

私の視点

私は色々な理由から、PLAYSTATION 3、Xbox360 については購入するつもりです。Wii については必要に応じてだと考えています。

PLAYSTATION 3 は少なくとも日本では成功するでしょう。世界的にはどうなるかはわかりませんが、Blu-ray ディスクの再生をサポートしていることや、従来の PlayStation 2 との互換性を備えていることなどを考えると、それなりのシェアを得ることができると思います。PlayStation 2 で得たものをさらに加速し、高度なビジュアル表現を可能にするハードウェアとメディア(Blu-ray ディスク)のサポートはバランスが取れており、あとは値段の問題だと思っていたところに前述の値下げの実施がなされました。これにより私の懸念の多くはなくなり、かなり成功の可能性は高くなっているように思います。

Xbox360 は、日本での地位は最低ながら、アメリカでは既に 15% ものシェア(ある所持しているゲーム機の複数回答のアンケート結果より引用)を確保しておりこれがなおも上昇しています。欧州圏でも着実にシェアを伸ばしていると聞いています。15% のシェアを既に持っているというのはなかなか侮れない事実です。ゼロから 15% のシェアに持っていくのは一夜では無理です。PLAYSTATION 3 も Wii もまずはこのシェアを超えることを目指すことになる点は明らかであり、1年先行したプレイヤーならでは優位性を得ています。後続プレイヤーがシェアを追い上げている間にさらなるシェアの向上を目指すことができるのです。私が思う唯一の弱点は、メディアの種類が DVD であるということです。なぜこれが弱点なのかというと、事実上のライバルと目される PLAYSTATION 3 が Blu-ray ディスクをサポートしていることと、Xbox360 がディスプレイ出力に対して HD 対応であるということです。前者は特に説明の必要はないと思います。後者の HD 対応しているというのは、HD により SD に対してほぼ4倍の情報量を誇るのにも関わらず、メディアが従来の DVD でしかないというのは弱点であると言わざるを得ないということです。HD に耐えられる豪華なテクスチャやプレレンダリングのムービーは4倍とは言わないまでもそれなりの情報量であるし、3つのコアで実行されるプログラムコードも3倍とは行かないまでもそれりに従来機よりも大きくなるのは言うまでもありません。また、PowerPC アーキテクチャのコードは x86 アーキテクチャのソフトウェアよりも大きくなる傾向があります(前Xbox は、x86 アーキテクチャであり、DVD を採用していました)。そのようなことを総合的に考えると、新世代ゲーム機の想定される寿命5年を考えたときに、DVD にしか対応してないのは大きなハンディキャップであるように思えるのです。いずれ、Xbox360 は搭載するメディアをアップグレードする必要に迫られる可能性があるのではないでしょうか。その時、それが HD DVD なのか、予想を裏切って Blu-ray になるのか、という点も注目に値するでしょう。

Wii は一定の地位を確保するものの、主流にはならないと考えています。現在日本のゲーム業界(というか、ゲーム系および IT 系のWeb ニュースサイトしかみていないので、業界全体では多少異なるかもしれません)では Wii は大変な好評を得ているように思われます。「現在」の状況を見る限り、Wii は必要十分なスペックを持っています。しかし、新世代ゲーム機としての想定される寿命5年を見たときにはどうでしょうか。基本的に SD 対応を想定したハードウェアスペックであり、HD が一般的になるとスペック不足は否めません。ここ1年で進んだ HD の普及や、それが加速的に進むであろう今後5年間。これらを考慮すると Wii はスペック不足が否めないのです。ソフトウェアの互換性を保ったまま、マイナーバージョンアップをすることで Wii の系譜に属するシリーズを延命することは可能であったとしても、現在の Wii そのものの寿命は PLAYSTATION 3 と Xbox360 よりも明らかに短いのではないでしょうか。また Wii の表現力や処理能力を PLAYSTATION 3 と Xbox360 は大幅に超えており、Wii ができることを PLAYSTATION 3 や Xbox360 が追いかけることはできても、逆はできないのです。これが何よりも Wii のスペック上の弱点となるでしょう。パソコン業界で何度も繰り返されたように、ソフトウェアによる一時的な優位性は恒久的なものではありません。そのことを考えると Wii のこの弱点はとんでもなく大きい可能性を秘めたものに思えます。

まとめ

ゲーム市場やゲーム業界に詳しくない私はこのような推測をしています。同業界や市場に詳しい人はまた別の見解を持つことでしょう。しかし、外にいるからこそ見えるものもあるのではないでしょうか。これから私もこれらの世界を知ることになるのかもしれませんが、現在、現時点においてここに立つ私は以上のように考えています。

おまけ

日本では過小評価されている(あるいは統計に現れにくいという意味で評価されていない、といえるかもしれない)もう一つのゲーム業界があります。それはパソコンによるゲーム業界と、携帯電話によるゲーム業界です。これらは流通体系や主流となる業界プレイヤー、業界団体などが異なることもあり、全体を集計したデータはないのではないでしょうか?(ちょっと検索したのですが見つけられませんでした)

年々ゲーム機以外のゲーム業界は拡大し続けています。それらの全体としてゲーム業界というものについても関連各位および興味のあるマニア諸氏、アナリスト各位は今後注視していく必要があるのではないでしょうか。

謝辞

今回のメモは U.Nakamura さん(なかむら(う)さん)の提案を基点として書いてみました。私には知識はないとはいえ、興味のある分野のことでしたので色々と調べながら楽しく書くことができ、かつ考えをまとめることができました。提案に感謝しています。「未来のゲーム機およびパソコン」を「新世代ゲーム機」に方向修正してしまいましたが……。私は未来を語れるほどのビジョンを持ち合わせていないのでこれで勘弁してください。

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