お久しぶりです
次をすぐに書くと書いておきながら、数ヶ月の放置。本当にすみません。この私のコラムというかメモというか。これを楽しみにしていらっしゃる方は多分いないんじゃないかと思ってますが^^;、自分向けのメモということで、私が未来の私のために、過去の私が何を思って何を選択していたのかを書き残してみることにしました。それをついでにここに公開してみようというのが、この「さかきけいのメモ」の趣旨です。
今回は Windows Vista RC 1 をインストールして使用してみた結果や感想などについて書いてみることにします。
Windows Vista RC 1
このメモを書いている時点で既に、この RC 1 のビルド番号である 5600 を超えるバージョンが一部向け(MS 選定の 10 万ユーザー)に公開されているものの、私は入手していないことから RC 1 Build 5600 を用いています。また、CD キーは Ultimate のものしか配布されていないため、評価対象は Ultimate となっています(Vista のインストールディスクの種類は2種程度といわれており、どのエディションになるかはCDキーによって決定されるとのことです)。
一応なぜ今 Vista の評価をする気になったかというと、1つはインストール環境を得ることができたこと、もう1つは自身が関連するソフトウェアの動作テストをそろそろしないといけない時期に差し掛かっているということがあります。
今回の試用環境
今回試用するために使用したマシンの構成を以下に示します。
種別 | 内容 |
---|---|
CPU | Intel Pentium 4 / 2.40C GHz |
M/B | Intel Desktop Board D875PBZ |
BIOSバージョン | BZ87510A.86A.0125.P34.0503312215 |
メモリ | PC-3200 DDR DIMM 512MB x 2(CL-2.5) (1Module / 2Bank) |
IDEモード | Enhanced |
HDD | Seagate ST3160021A (7200rpm / 160GB) / PATA-0-Masterに接続 |
DVD-ROMドライブ | JLMS XJ-HD165H / PATA-0-Slaveに接続 |
ビデオカード | SAPPHIRE X1600 PRO 512MB DDR2 AGP VGA(ATI Radeon X1600PRO 512MB) |
サウンドカード | CREATIVE Sound Blaster Audigy Value |
インストール
Microsoft のサイトからダウンロードした DVD 用の ISO イメージを DVD-R メディアに書き込み、これをブートしてインストールを行います。特に悩むことなくインストールをすることができます(後述する問題がありました)。CD キーを入力してインストール先のハードディスクと領域を選択してインストールを行うだけです。インストールにかかった時間は、ユーザー登録画面まで27分、入力したユーザーでログインできるようになるまで33分、ログイン完了まで34分半でした。
この状態で認識されていないデバイスに CREATIVE Sound Blaster Audigy Value がありましたが、これはオンライン上にドライバが登録されているため、自動あるいは手動でオンライン検索をすればインストールすることができます(自動で組み込まれることもあれば、手動で組み込む必要があることもありました)。
性能指標(Windows エクスペリエンス インデックス)
インストールの最後にそのハードウェアの性能を計測します。これは Windows Vista の新しいユーザーインターフェース Aero を有効にするか否かおよびこの指標を参照するアプリケーション(主にゲームを想定している模様)向けに提供されます。今回のハードウェアにおける測定結果は以下の通りとなりました。この結果で Aero は有効に設定されました。
指標 | 結果 |
---|---|
プロセッサ | 3.8 |
メモリ | 4.4 |
グラフィックス | 4.4 |
ゲーム用グラフィックス | 4.6 |
プライマリハードディスク | 5.2 |
新しいユーザーインターフェース
一般に Windows Vista が最も注目されているのは新しいユーザーインターフェースでしょう。Windows 95 からはじまるユーザーインターフェースの系譜を継承し、さらに拡張して 3D グラフィックス機能をも使用するようになったこのユーザーインターフェースは、Windows 3.1 から Windows 95 へ移ったときのように新しい感覚を得ることができます。慣れは必要なものの、かなり練りこまれているように思います。3D 機能を用いているとはいえ、華美に演出をするのではなく、比較的控えめな使い方に抑えているのがいい感じです。ただし、ユーザーインターフェースそのものの練りこみはもう少し足りないように思います。特にウィザード系の「戻る」と「進む」の関連の直感性のなさはどうかと思います(「次へ」は従来どおり右下方面にあるが、「戻る」は左上に表示される)。とはいえ、慣れれば(理解すれば)それはそれでなんとなかりますが、最初は戸惑うでしょう。
また、従来の Windows Explorer の汎用さが抑えられ、「ユーザーに OS が見せるべきもの」を中心に見せるものにアーキテクチャが変更されています。従来の汎用度(自由度)の高い Windows Explorer に慣れていると面食らうかもしれません。というか、面食らいます。しかしながら、これも結局慣れの問題で、しばらく使っていれば慣れます。
新しい機能
ユーザーインターフェースの派手さとは別のところに、地味に追加された新しい機能があります。この機能とは OS としての機能であり、API レベルでの拡張がなされています。例えば、ネットワークアクセスのキャンセル機能(正確にはI/O全般のキャンセル機能)、NTFSのトランザクションサポート、レジストリのトランザクションのサポートなどがあります。これらの拡張は「自然に」「それと分かるようでもなく」ユーザーインターフェースにも反映されていることがあります。
ネットワークアクセスのキャンセル機能はユーザーインターフェースからも見て取ることができます。従来はネットワークアクセス、特にファイルの共有関連では、ユーザーインターフェースがブロックしてしまい、その操作が終わるまでウィンドウが固まって操作できないという状態がよく発生していました。これが、新しい API を用いたユーザーインターフェースでは、ネットワークアクセスの進行度が表示され、ユーザーインターフェースのブロックが行われなくなりました。そして、そのネットワークアクセスのキャンセルもできるようになりました。これは Windows XP でも実現されていないところで、従来はブロック状態の Windows Explorer を閉じようとして強制終了しても、その操作のキャンセルはできず、それが終わるまで動作が不安定化するという問題がありましたが、このような問題は発生しなくなっています。
NTFSとレジストリのトランザクションサポートは地味ながら、非常に大きな意味を持つ拡張であると個人的に考えています。従来は複数ファイルやレジストリの更新は、その途中でその更新が失敗した場合の従前状態の回復はアプリケーションの責任で行う必要がありましたが、Windows Vista では API レベルでのサポートが加えられており、これを使用することで非常に簡単に複数項目の信頼性のある更新が行えるようになっています。データベースのトランザクションと同様に、使えば使うほどにありがたみを感じることができそうです。
Windows Vista が Longhorn と呼ばれていた頃から、色々な目玉機能が削除されていますが、OS としての機能は着実に進化しており、その他の部分でもかなりいろいろと興味深いものが追加されています。Win32 API や .NET に対する知識のある方は Windows Vista を調べてみることをお勧めします。かなり色々と地味だけれど痒いところに手が届くような API が追加されていることを確認できるでしょう。もちろん、かゆいところに全て、ではないのですが。
ソフトウェアの互換性
ユーザーインターフェースの刷新やセキュリティモデルの追加など、互換性に影響のありそうなかなり変更点を含む Windows Vista ですが、ソフトウェアの互換性はなかなかのものです。手持ちのソフトウェアで確実に動かないことが分かったのは、スクウェア・エニックスの PlayOnline Viewer くらいです。このソフトウェアは、それそのものの動作の問題ではなく、バージョンチェックをしており、Windows Vista では動作しない旨のダイアログを表示して終了してしまいます。このバージョンチェックは、互換性設定のバージョン詐称では効果がなく、どうしても起動したいのであればパッチを当てるしかないでしょう。これは Windows Vista の互換性問題というより、OS のバージョンアップ時によくある問題の1つであるといえるでしょう。なお、この PlayOnline Viewer をランチャーとして(というと語弊もあるかもしれませんが)起動する FINAL FANTASY XI の公式ベンチマーク3は動作しました。結果は控えますが、 Windows XP で計測した値よりは1ランク下の数値となりました。また、これはドライバの問題なのか OS (に含まれるDirectX)の問題なのか判断できませんでしたが、同ソフトウェアの色調補正(主に明るさの補正)が効いておらず、表示が非常に暗くなってしまっていました。
ハードウェアの互換性
最初に Windows Vista のインストール時に、どうしてもインストールできないという状態に遭遇しました。そのときは前述の試用環境に上げたハードウェア構成とは一部異なり、RAIDON TECHNOLOGY, INC のハードウェア RAID 装置である SOHORAID SR2000 を使用していました。この RAID デバイスは、ソフトウェアからは1つのハードディスクドライブに見え、専用のデバイスドライバを必要としないのが売りです。Windows だろうと Linux だろうと、特別なデバイスドライバを用意することなく RAID-1 を実現できるわけです。この RAID デバイスを接続した状態で Windows Vista のインストールを試みると、インストールによる再起動直前の段階で、インストールが失敗するという問題が発生します。当初は、この RAID デバイスが原因であるとは考えていなかったため、時間と金銭を多少浪費してしまいました。
何しろ、この RAID デバイスは、Windows XP や Windows 2000、各種 Linux ディストリビューションのインストールでは問題が発生しないからです。まさかこれが Windows Vista インストールの障害になっているなど、想像もしませんでした。
しかし、各種カードの変更や取り外し、BIOSのバージョン変更等を経て、最終的に RAID デバイスの変更しか選択肢がないところまで来て、このデバイスを取り外してインストールしてみたところ、なんと問題なくインストールが完了しました。私の予想に反して原因はこの RAID デバイスだったのです。
このインストールの完了したハードディスクドライブを RAID デバイスに入れて起動してみたところ、問題なく起動しました。このため問題がないのだろうと考えてそのまま使い始めたのですが、半月ほどで Windows Vista はぼろぼろになってしまいました。イベントログを見るとエラーの山。ATA コントローラでのエラーまで報告される始末で、結局のところ、この RAID デバイスは残念ながら Windows Vista との互換性はないようだ、という結論に至りました。
Windows Vista では、従来の ATA デバイスに求める以上の「何か」をデバイスに対して求めるようです。これまで問題の発生していなかったその他のデバイスにおいても、Windows Vista では問題を生じるかもしれません。移行に際しては十分な検証をする必要があるでしょう。
品質
一般に、Windows Vista RC 1 は、それまでのβシリーズとは比較にならないほどブラッシュアップされ、製品に近い品質を持っていると言われています。私も概ねその意見には賛成しますが、製品に近い品質、というのはあくまでも「近い」であって、「同等」ではないということを強く指摘しておきたいです。現在の Windows Vista RC 1 は、かなりよく動きますが、それでも製品品質には到達していません。細かいバグはぽろぽろあるし、イベントビューアに記録される細かいエラーの数も多く、Windows Media Player で DVD を再生した時のコマ落ちのひどさ(同じ環境のWindows Media Centerではコマ落ちしないため、CPU処理能力の問題ではない:そもそも再生中に 30% 前後しか CPU を使用していない)、Windows Media Center で DVD を再生するときに、DVD メニューの中身が正しく表示されないことがあること、また DVD の再生時に不正確なトラック順序での再生をすることがあること、スクリーンセーバーに落ちたあとにポーズ中の DVD の再生に戻れないことがあること、スクリーンセーバーに落ちたあとに Windows Media Center の解像度が不適切になることがあること、ディスプレイのセッティングのための説明ムービーでの文言と実際に設定を行うための選択肢の文言および選択肢そのものの間に不整合があること、ヘルプの日本語化率が Windows 2000 β2程度であること、Windows Vista をハイバネーションさせたあとに復帰させ、その間の経過時間がスリープの指定間隔以上であると、ハイバネーションの復帰直後にスリープしてしまうこと、などなど。とにかく上げればどんどん問題を指摘できます。
このように、コア部分のブラッシュアップが整いつつあり、その上に載る部分のブラッシュアップがようやく開始されたところである、というのが、現在の Windows Vista の状況では無いかと思います。問題の多くは軽微なもので、おそらく製品までに修正が間に合うものも多いでしょう。しかしながら、一部の不具合は致命的で、XXXXでYYYYするとリブート、というようなものも複数存在しています。
このため、現状では Windows Vista に興味のある、ある程度の IT リテラシーがある人、Windows 向けのソフトウェアの開発者、仕事の関係で Windows Vista に接する必要がある人以外にはお勧めできる状態にはないと思います。今後、雑誌に付属する方法で配布を行うそうですが、自身にとってソフトウェアやハードウェアの互換性、ソフトウェアの品質上のリスクなどの問題を総合的に判断した上で、インストールの可否を決めることをお勧めします。つまり、現在のバージョンは万人にお勧めできるものではありません。これは、Microsoft が Windows Vista を RC 1 としており、製品版としていないことからもわかるように、そういう位置づけのソフトウェアであるということです。
多くの人が使ってもいい、と言えるのは、少なくとも Service Pack 1 やそれに相当するものが出た後では無いかと私は予想します。
セキュリティ
さて、Windows Vista ではセキュリティに関する変更が数多く用いられています。この中でよく話題に上るのが、UAC(ユーザーアカウント制御) です。通常の操作は全て非特権モードで行い、必要な場合に限って自動的にユーザー権限の昇格を行う、というものです。デバイスやサービス、セキュリティ関連の設定を行おうとすると、一瞬画面が暗くなったあとに、専用のダイアログが表示されます。保護されたフォルダの中身の変更や更新、追加、削除など、あらゆる特権の必要な操作で表示されます。
正直「うるさい」と感じる人もいるでしょう。この機能はユーザーアカウントの設定から「ユーザーアカウント制御の有効化または無効化」で有効・無効の設定が出来ます。めんどくさがりのユーザーは無効にしたがるかと思いますが、個人的には明確に無効にする理由がなければ有効にしておくことをお勧めしたいところです。事実、私は有効のまま使い続けています。
自動化や汎用化とリスクの間には相関関係があり、自動化や汎用化を進めればそれだけリスクが上がります。このため、ユーザーの判断によって権限を昇格させるまでは勝手なことをしない、というのが UAC の狙うところです。意図して行う操作についても、いちいち確認されることになることから、確かにウザったいところはあるのですが、これによって防ぐことができる危険性を考えると、トレードオフとしてそれなりにいいところでもあるのではないかと思います。もちろん、今後まだまだ改良できるところはあるでしょう。それでもこの1歩は評価できるものであると思います。
私からのアドバイスとしては、UAC を無効にしようと思う人は、何で無効にする必要があるのかシステム的に必要性を説明できるかどうか考えてみることをお勧めします。説明できない人は無効にすべきではないでしょう。なぜなら該当する方は UAC によって保護されるべき人だからです。そういう人のために UAC は存在するのです。
総論
Windows Vista RC 1 の完成度は評判どおりかなり高く、良ければスケジュールどおりに、悪くても1〜2ヶ月程度の遅れでリリースされるでしょう。しかし、Windows Vista を必須とするソフトウェアやハードウェアが出てくるまでは、プレインストールのハードウェアを選ぶ場合を除いて、すぐには積極的に選ぶ必要はないと考えます。特に企業ユースでは、Longhorn Server が出荷されていないこの時期に、Windows Vista を積極的に選ぶ理由は少ないでしょう。個人ユーザーの場合は、パソコンが趣味で Windows Vista を入れたい人、ソフトウェア開発を行っている人、仕事で Windows Vista を使用する必要がある人を除いてはすぐに飛びつく必要はないのではないでしょうか。
Windows Vista は当初発表されたいくつかの野心的な新機能のいくつかを断念したため、OS としてあまり先進性がないように言われている面もありますが、実に多岐にわたる基礎的な改良が加えられており、今後の Windows 基盤を担う製品として、意味のあるものになっていると思います。Windows XP から 5 年たって経ってようやく登場するこの Windows Vista は、その「長期安定政権」であった Windows XP が最大のライバルであるという現実を受け入れ、そして超えていけるのかが非常に興味深いと思います。もちろん、Windows Vista は最終的に現在の Windows XP の占める位置になるとは思いますが、問題はその速度です。個人的には各種の細かいが意味のある、地道な改良を非常に気に入っているので、できれば早く Windows Vista が、Windows としての主流に早期になることを願っています。