はじめに
最近、特に何も指定していないパソコンのMicrosoft Windows 10(Windows 10)に対しても新たなるOSレベルの更新であるVersion 2004(OSビルド 19041.685 / May 2020 Update)が配信され始めました。
私のメイン・パソコンのMicrosoft Windows 10 Homeにも、このバージョンが配信され、表示された指示に沿って更新したのですが、その結果として「デスクトップにフォルダーを新規作成すると固まる」、「共有ドライブにアクセスすると固まる」、「ふとした瞬間にフリーズする」、「Windows エクスプローラーが不意に固まる」、「Windows シェルそのものが固まる」、「内蔵SSD内でファイルの移動をすると固まる」といった、数々の不具合に直面することになりました。
今回はその件について私なりのメモを書いてみたいと思います。
何が起きたのか
率直にいって最初は何が起きたのかわかりませんでした。何か操作をするとふと固まります。そしてデスクトップやタスクバーのなどの表示をつかさどるエクスプローラー※1が落ちてしまう、そんな状態が繰り返されました。
最近インストールしたソフトウェアの不具合を疑いたくもなりましたが、どう考えても影響範囲が広すぎます。
何度か再起動をしながら状態を観察していたところ、ログイン直後に復元されるネットワーク・ドライブが途中までになっていることに気づきました。そしてネットワーク・ドライブをつついていると、Microsoft Windows Server 2003 Standard Edition(以下、Windows Server 2003)が提供する共有フォルダーのドライブへの割り当てにアクセスすると表示が更新されないことに気づきました。
私のローカル・ネットワークではMicrosoft Windows 95(以下、Windows 95)やMicrosoft Windows NT Workstation 4.0(以下、Windows NT 4.0)など、20年以上前のMicrosoft Windows(以下、Windows)が存在します※2。このために、あえてWindows Server 2003のマシンを設置し、その共有フォルダーを通じて最近のMicrosoft Windows 7/10などとのファイル共有を行っていました。
そんな目的のために、メイン・マシンでもWindows Server 2003の共有フォルダーをドライブに割り当てていたという状況です。
というのも、最近のWindowsはSMB※3 2.xあるいは3.xというバージョンのファイル共有プロトコルを使用するのですが、以前のWindowsはSMB 1.0というバージョンのファイル共有プロトコルを使用します。そして、このプロトコルにはそれぞれに互換性がないのです。
このため、メイン・マシンではデフォルトで無効となるSMB 1.0のクライアントをWindows 10の設定で有効にして、Windows Server 2003の共有フォルダーをドライブに割り当てていたのです。
しかし、今回このSMB 1.0互換機能がWindows 10, Version 2004で壊れてしまったのです。
障害からの復旧
まずは、何をしてもすぐに固まってしまうWindowsの状況を何とかすることにしました。SMB 1.0で共有されるフォルダーをドライブに割り当て(マウント)していると、Windows自体が大変に不安定になってしまうという状況です※4。この状態でシステムの設定を変更するのは大変リスクがあるように思われました。
そこで、まずはこの状況を脱するために「エクスプローラー」からフォルダーの共有解除の操作を試みたのですが、ドライブを右クリックした時点で固まってしまい、途中でエクスプローラーが再起動してしまい、うまく共有フォルダーの解除ができませんでした。
そのため「Windows Power Shell」を起動してコマンド・ラインから共有を解除することを試みました。入力したコマンドは以下の通りです(「x:
」には実際のドライブ・レターが入ります):
net use x: /d
このコマンドを入力後、正常に終了するまでかなりの長い時間がかかりますが、最終的(結果的)に成功します。
その後エクスプローラーで共有が解除されていることを確認したうえで、なぜこうなったのかを調査することにしました。
状況の分析
当初はSMB 1.0の機能を有効にする処理がWindowsの新たなバージョンへの更新で適切に動作しなかったのではないかと疑い、「Windowsメニュー」→「アプリ」→右側の関連設定の「プログラムと機能」→左側の「Windowsの機能の有効化または無効化」で表示される「Windowsの機能」から「SMB 1.0/CIFSファイル共有のサポート」を無効にしてから有効にするなど、正常に動作させることを期待した操作をしたのですが、何度か繰り返しても状況の改善は残念ながら見られませんでした。
結果としてSMB 1.0対応のファイル共有プロトコルが、このWindows 10, Version 2004では使えないという事実に行き当たることとなりました。
Windows Server 2003でなくてもよいのでは?
Windowsのネットワークに詳しい人であれば「であるならば、Network Attachment Storage(NAS)を導入して、SMB 1.0とSMB 2.x/3.xを両方有効にすればいいのでは?」と思うかもしれません。それは一つの解決策として決して間違っていません。そして、私のローカル・ネットワークにはそのために使うことができる可能性のあるSynologyのNASが1台存在しています。しかし、このSynologyのNASについても別の落とし穴があり、そういった運用が私のネットワークの使い方では「よし」とできないのです※5。
そのため、誠に残念ではあるのですが、現時点ではいったん旧Windows群とのファイル共有を諦める運用をすることにしました。
とはいえ、それも恒久的には困るのでいくつかの方法でなんとか解決することを模索していこうと考えています。
ま、解決できるまでの間はMOディスクなどの物理ディスクでなんとかできるでしょうしね…。
まとめ
このようにWindows 10のVersion 2004ではSMB 1.0の共有フォルダーへのアクセスに問題が生じます。完全に問題があるわけでもなく、少しだけアクセスできたりすることもあり(フォルダーが正しく表示されるなど)、なんとももどかしい気持ちになりますが、Version 2004のリリースから半年も経過した2020年12月現在でもこの状況です※6。
残念ながら今後も期待できないのかな、と思っています。
とはいえ、もしも壊れたSMB 1.0のサポートを復旧していただけるのであれば、非常に助かりますし、嬉しいです。ぜひともよろしくお願いします。→Microsoftさま
- Microsoft Windows 95以降の伝統として、Windowsではタスクバー、デスクトップの表示などは全てエクスプローラーが担当しています。
- Server Message Blockの頭文字をとった略語です。International Business Machines(IBM)が開発し、Microsoftが発展させたファイル共有などを行うためのプロトコルの名称です。
- 何かの拍子にSMB 1.0によって共有されるフォルダーへ何らかの理由でアクセスするプログラムがあると、それ以降は動作が不安定になってしまうという状況です。これは明示的に該当ドライブへアクセスしなかったとしても、共有フォルダーへのドライブの接続復元では「復元できた」というステータスとなるため、何らかの理由でアクセスしようとするプログラムが接触した時点で問題を生じるとという状況となることから引き起こされます。例えばエクスプローラーのように全体をツリー表示するようなソフトウェアは顕著に影響を受けます。
- この件については別途メモを書きたいと思っています。
- これを執筆している2020年12月17日(木)時点において、同日の14時16分時点で最新という表示となっています。