書籍「死の淵を見た男 – 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日」

このページでは珍しく、まんがでもアニメも技術書ではないのですが、表題の本を読んだのでちょっと書いてみたいと思います。

書籍「死の淵を見た男」写真

2011年3月11日のあの時間のことは私もよく覚えています。その日は前の仕事と次(今)の仕事の間だったため、自宅にいました。

とにかくすごい揺れで…。その揺れのさなか、室外へ避難しました。当時花粉症で、避難した先の駐車場で鼻水だらだら涙もだらだら、そして地面はぐらぐらのまま、暗くなり始めるまで同じく避難してきた近所の人たちと世間話(?)をしながら過ごしていました。

その後は鉄筋コンクリート造りな建物に避難して、ずっとテレビを見ていました。翌日自宅に戻ってからも本当にずっとテレビを見ていました。あんなにテレビを見続けたことってなかった感じです。一方で余震が続いていて、また大きな地震が来るのではないか、実はあの大きな地震も余震に過ぎないのではないかと、無駄に頭を回して疲れ切っていました。

さらに、テレビで刻々と伝えられる福島第一原子力発電所の絶望的に聞こえる状況や、その場所にとどまって作業を続ける人たちのこと、それに、どうしても考えてしまう「最悪の事態」。距離的に考えて、本格的に爆発したら自分もただでは済まないだろうなぁ、とか、今のうちに逃げる?どこへ?とか、爆発してから逃げるっていうのは無理だよね、きっと交通混雑で大パニックだろうし、とか、こんな状況下でも普通に会社へ行ってるみなさんすごいなぁ、とかとか。もう、本当に頭の中はぐるぐるしていました。

そんな同じ時間帯に福島第一原子力発電所で原子炉の爆発を防ぐために奔走した人たちの話です。

本書では吉田昌郎所長(当時)にもインタビューをしています。その中から1つだけ引用します:

「格納容器が爆発すると、放射能が飛散し、放射線レベルが近づけないものになってしまうんです。ほかの原子炉の冷却も、当然、継続できなくなります。つまり、人間がもうアプローチできなくなる。福島第二原発にも近づけなくなりますから、全部でどれだけの炉心が溶けるかという最大を考えれば、第一と第二で計十基の原子炉がやられますから、単純に考えても〝チェルノブイリ×10〟という数字が出ます。私は、その事態を考えながら、あの中で対応していました。だからこそ、現場の部下たちのすごさを思うんですよ。それを防ぐために、最後まで部下たちが突入を繰り返してくれたこと、そして、命を顧みずに駆けつけてくれた自衛隊をはじめ、たくさんの人たちの勇気を称えたいんです。本当に福島の人に大変な被害をもたらしてしまったあの事故で、それでもさらに最悪の事態を回避するために奮闘してくれた人たちに、私は単なる感謝という言葉では表せないものを感じています」

死の淵を見た男 356ページより引用

吉田所長に限らず、菅直人総理(当時)、班目春樹委員長(当時)他、本当に多くの人にインタビューして構成されていて、読み応えがある1冊です。

命、助けられたなぁ、と思いながらしみじみと読みました。

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