はじめに
かつてのヤマハはMSX規格のパソコンを販売していました。製造はミツミ電機であったといわれています。ヤマハはMSXには深くかかわっており、MSX規格の支持者であり、MSX2以降に採用されたVDP「V9938」および「V9958」の開発元でもあります。そして、MSX-AUDIOに準拠するFM音源+ADPCM音源を搭載するチップ「Y8950」なども開発・販売していました。
モニターを接続するためのケーブル
その初期のMSXシリーズのうち、YAMAHA CX5/CX5F/CX5M/YIS 503などの機種では、モニターへとつながるケーブルを接続するためのコネクターとして(MIDIと同じ)DIN 5ピンを採用しています。このDIN 5ピンは以下のようなピン・アサインとなっています。
ヤマハが公開しているCX5/CX5F 取扱説明書 (画像データ) [2.4MB](PDF)の25ページより引用
この図はレセプタクル(メス)を見た面に対するピン・アサインです。プラグ(コネクター)側に対するはんだ付けを行う際にも、このピン・アサインと同じになります(プラグの裏側に対してはんだ付けを行うため、結果としてひっくり返ってレセプタクルを正面から見たの通りのピン・アサインとなるのです)。
筆者所有のYAMAHA YIS 503のMONITORコネクター(右)
今回はこのコネクターに対して一般的なモニターに接続するためのビデオ+オーディオ変換ケーブルを作成してみたいと思います。なお、純正品では「VC-02 Video Connector Cable」というものがこれに該当するようですが、これが手持ちにないために作ってみるという趣旨です。
必要なもの
今回使用したのは以下のものです(リンク先は使用したもののリンク先でありアフィリエイトではありません):
- DIN 5ピン・プラグ(オス・コネクター) – DINプラグ5P MP-132/8 マル信無線電機製|マルツオンライン
- ビデオ+ステレオ・オーディオRCAケーブル – 秋葉原ラジオデパート3F トモカ電気にて販売している3メートルのもの
- ニッパー – 三枚合せニッパ – トップ工業株式会社ウェブサイト
- はんだ – SD-62 | 太洋電機産業株式会社
- ワイヤー・ストリッパー – ワイヤーストリッパー No.3500 E-2(単線・より線用) | 玄人魂 | ハンドツール | 製品情報 | 株式会社ベッセル
- はんだごて – RX-802AS | 太洋電機産業株式会社
- 熱収縮チューブ – 製品情報 | SUMITUBE ® (住友電気工業)の透明 10mm×1メートル
- ヒートガン(熱風機) – PJ-M10 of 石崎電機製作所 – 昭和三年創業の電熱機メーカー
- テスター – PM3|製品詳細|三和電気計器株式会社
- アート・ナイフ – 【オルファ】アートナイフ
- 一般的なペンチ – 今回は先の細いものを用意
- はんだ付けの際にDIN 5ピン・プラグを固定するための器具(万力など)
組み立て
- RCAケーブルを真ん中で切断します。必ずしも真ん中である必要はありませんが、今回は3mを1.5mの2本として、2つの変換ケーブルを作るためにこのようにしました。1本でよい場合には3メートルのケーブルではなく1.5mのケーブルを選択すると100円安くなります(2017年3月26日筆者訪問時点)。
- ケーブルの先端に20mmほど切り込みを入れて3本ばらばらにします(実際に入れる切り込みの長さは使用するDIN 5ピン・プラグの構造に合わせてください)。先端5mmから10mmくらいを切るだけでもはんだ付けは可能ですが、DIN 5ピン・プラグにはんだ付け後にかしめる際に難儀することになります。かしめないとケーブルを引っ張った時の強度に問題が出ますので注意が必要です。
- 切り分けた各ケーブルの先端8ミリくらいのところにアート・ナイフでぐるっと一回りの切り込みを入れて、被覆をはがします。
- 芯の被覆をワイヤー・ストリッパーを使ってはがします。今回の例では0.5mmがちょうどのサイズでした。サイズが分からない場合には大きなサイズから順番に試していくことで、ちょうどのサイズを知ることができます。
- 芯を覆っている周囲の銅線をネジって1つにまとめます。
- DIN 5ピン・コネクターを分解します。まず、外側の黒い樹脂製のカバーをワイヤーを取り付ける側に引っ張って外します。続いて、コネクターを囲むようについている2枚の金属片を外します。するとコネクター本体が姿を現しますので、これを固定器具に取り付けます。
- 固定器具に取り付けたコネクター本体の2ピン、3ピン、4ピンに予備はんだをします。はんだ線を各コネクターの芯の部分に入れて、外部からはんだごてを充てることで簡単に予備はんだをすることができます。
- コネクターの樹脂製のカバーをケーブルに通します(後からは通せないので必ず先に通す必要があります)。
- 20mmほどに熱収縮チューブを切断してケーブルに通します(後からは通せないので必ず先に通す必要があります)。
- 各ケーブルのうち、周囲を覆っていた銅線を1つにより集めます。この時、先端部分がとがった状態になるようにすると、コネクターの2ピンの芯へのはんだ付けがやりやすくなります。
- 各ケーブルのうち、オーディオの右側と左側の芯の導線を1つにより集めます。これも先端がとがった状態になるようにすると、コネクターの3ピンの芯へのはんだ付けがやりやすくなります。
- より集めた銅線3本をそれぞれのピンにはんだ付けします。
- テスターを使ってDIN 5ピン・コネクターがそれぞれ通電しないこと(=ショートしていないこと)を確認します。通電している場合にははんだ付けかケーブルの処理に問題があるので見直します。
- ここで仮組み立てを行い、動作確認を行います(自信があれば省略しても構いませんが、その場合は後続に不可逆的な作業があるため、最悪DIN 5ピン・コネクター1つを失う可能性があります)。仮組み立てでは金属カバーをはめてから樹脂製のカバーを軽くはめて、実機にコネクターを差し込み、もう一方のRCAコネクターをモニター(あるいはテレビなど)に接続し、実機の電源を入れて正常に表示され、音が出ることを確認することで行います。試してだめならば、金属カバーを外してはんだ付けをするところから、あるいはケーブルを切断するところからなど、状況に合わせた部分からやり直します。問題がなければ樹脂製のカバーを外し、金属製のカバーも外します。
- 熱収縮チューブをDIN 5ピン・コネクターの近くまで引っ張り上げてからヒートガンで加熱します。ここでは加熱をしすぎないように注意が必要です。チューブが収縮したらすぐに加熱を止めます。
- DIN 5ピン・コネクターに留め金がある方の金属カバーをはめます。
- 熱収縮チューブによってまとめられたケーブルを金属カバーの留め金でかしめます(ペンチで留め金を絞めてケーブルを固定します)。
- もう片方の金属カバーをDIN 5ピン・コネクターにはめ込みます。
- 樹脂製のカバーをDIN 5ピン・コネクターにかぶせて完成です。
完成品を使ってみる
今回の作業で作ったDIN 5ピン・プラグ(コネクター)付きのモニター・ケーブルがこちらです:
それでは実際にYAMAHA YIS 503とモニター(テレビ)に接続してみましょう:
このように正常に表示されることが確認できました。写真では確認できないのであれですが、外付けキーボード(鍵盤:YAMAHA YK-01)からの入力でしっかりSFG-01(YAMAHA YM2151搭載)の音が出ています。
まとめ
今回は前述のように、具体的なピン・アサインがドキュメントに残されており、それがダウンロードできるという幸運な状況があります。YAMAHA(当時・日本楽器)の関係者の皆様がこのように、かつて販売していた機器のマニュアルを現代においても提供してくださっていることを称賛するとともに、とても感謝しています。
このような企業の製品はこれからも安心して購入することができると思います。今後もこのような手厚い対応をしてくださることを希望しつつ、本メモを終わりたいと思います。