インテル Galileo Gen 2ボードをPower over Ethernet対応にする

はじめに

「インテル Galileo Gen 2 ボード」はオプションのユニットを装着することで「Power over Ethernet(PoE)」をサポートします。PoEとは、Ethernetケーブル経由で電力を供給する機能のことを指します。今回は、このPoEに対応するためのユニットをインテル Galileo Gen 2 ボードに装着し、動作を確認してみたいと思います。

免責の表明

本ページの記載について、筆者は一切の責任を負いません。すべては読者の方々ご自身の判断においてご使用ください。

使用するもの

今回は以下のものを使用しました(カッコ内は今回筆者が使用したもの):

廃棄上の注意

今回の作業をするにあたり、はんだについては融点が低く扱いやすいことから有鉛のものを使用しました。このため本ページに記載の作業によって、Intel Corporationからの出荷時に無鉛である「インテル Galileo Gen 2 ボード」は有鉛(Pbあり)の基板に変化します。これによって廃棄の際の区分が変更となることがあることにご留意ください。

鉛は人体にとって有害な金属であることを認識し、廃棄の際には所属する各自治体の区分を確認して有鉛であることを前提にした手順を選択してください。

PoEの仕様について

PoEにはいくつかの規格が存在しています。そのうち、今回はIEEE 802.3af Alternative B(Type-B / Mode-B)※4に準拠したパワー・インジェクター※5を使用しました。Alternative A(Type-A / Mode-A)※6では一切テストを行っていませんので、実際に接続を行う際にはご注意ください(PoEユニットの回路図を見る限り、Alternative Aでも問題なく動作するものと考えます)。

参考ページ1計装豆知識|PoE(IEEE802.3af)
参考ページ2Ag9700 – Low cost IEEE802.3af PoE PD

ユニットの装着と動作確認の手順

  1. Silvertel Ag9712-FLの梱包を解きます。
    1. 初期状態では黒色の樹脂製のカバーに包まれています:

      カバーで覆われたPoEユニット

    2. 黒色の樹脂製カバーを外します:

      カバーを外したPoEユニット

    3. 段ボールに挿してあるユニットを取り外します。取り外したユニットの両面を以下に示します:

      PoEユニットの表面

      PoEユニットの裏面

  2. インテル Galileo Gen 2 ボードにSilvertel Ag9712-FLを当てて取り付ける位置を確認します:

    Intel Galileo Gen 2へのPoEユニット合わせ

  3. はんだ付けの準備としてインテル Galileo Gen 2 ボードにSilvertel Ag9712-FLをマスキング・テープで固定します:

    Intel Galileo Gen 2にPoEユニットをマスキング・テープで仮止め①

    Intel Galileo Gen 2にPoEユニットをマスキング・テープで仮止め②

    これによってフリー・ハンドではんだ付けを行えるようになります。また、パーツを手で固定する必要がなくなることからやけどの恐れを回避することができます。

  4. はんだ付けをします。ピンは10本あり、対応するそれぞれのホールは「めっきスルー・ホール」となっていることを前提にはんだ付けを行います。なお、筆者は10本中8本は1度ではんだ付けをすることができましたが、残りの2本はきれいにはんだ付けすることができず、はんだ吸い取り線を用いて処理をして修復作業をすることになりました。情けない…。うまくはんだ付けができると、ピンとスルー・ホールの間が広いこともあって反対側の基板面とピンにもはんだがいきわたります。このため、通常の片面のはんだ付けより気持ち多めにはんだを供給する方がよいでしょう(それによってはんだが供給面でのみ盛り上がるならイモはんだを疑うべきです)。
  5. マスキングテープを外します:

    Intel Galileo Gen 2にPoEユニットを取り付け済み②

    Intel Galileo Gen 2にPoEユニットを取り付け済み①

  6. 動作確認をします。
    1. PoE電源のパワー出力対応コネクターに全結線のカテゴリー5ケーブルを挿します。
    2. そのケーブルのもう片側をインテル Galileo Gen 2 ボードのEthernetコネクターに挿します。
    3. PoE対応のハブあるいはパワー・インジェクター(以下、PoE電源)を電源に接続します。
    4. 電源が入って通常通り起動することを確認します:※7

      Intel Galileo Gen 2をEthernetケーブルのみで起動

    5. 必要に応じてEthernetの使用ができる状態としてから通信が正常にできることを確認します。
      今回は24時間以上電源を入れたままpingを行いましたが、何等問題が起こらないことを確認できました:

      root@clanton:~# ping 192.168.0.1
      PING 192.168.0.1 (192.168.0.1): 56 data bytes
      64 bytes from 192.168.0.1: seq=0 ttl=64 time=1.345 ms
      64 bytes from 192.168.0.1: seq=1 ttl=64 time=1.288 ms
      64 bytes from 192.168.0.1: seq=2 ttl=64 time=1.257 ms
      64 bytes from 192.168.0.1: seq=3 ttl=64 time=1.294 ms
      ~中略~
      64 bytes from 192.168.0.1: seq=42909 ttl=64 time=1.248 ms
      64 bytes from 192.168.0.1: seq=42910 ttl=64 time=1.251 ms
      64 bytes from 192.168.0.1: seq=42911 ttl=64 time=1.305 ms
      64 bytes from 192.168.0.1: seq=42912 ttl=64 time=1.346 ms
      
      --- 192.168.0.1 ping statistics ---
      108449 packets transmitted, 108444 packets received, 0% packet loss
      round-trip min/avg/max = 0.469/1.269/4.349 ms
      

PoEとDCジャックの関係

PoEによる受電中には、DCジャックには12V※8の電圧の電力が供給されます。つまり、PoEによる給電からPoEユニットを経由して12Vの電源回路への供給が行われるようになっています。このため、PoEによる受電中にDCジャックへACアダプターを差し込むのは念のために避けた方がよいでしょう。

一方でPoEによる受電をしていない状態でDCジャックから受電するのは問題ない回路になっているようです。Silvertel Ag9712-FLの回路を見ると、出力側からの逆流に対しては変圧コイルの前にダイオードがあり、ここでせき止められるでしょう。それよりも出力側にあるのはコンデンサーだけであり、極性も一致しているため問題にならないように見えます:

PoEユニットであるAg9700-FLシリーズのブロック・ダイアグラム

Ag9700 – Low cost IEEE802.3af PoE PD – Silvertelより引用

まとめ

このように、PoEモジュールをインテル Galileo Gen 2 ボードに取り付けることにより、ACアダプターからの電力線を省略することができるという大きなメリットが生じます。1本線が減るだけのように思われるかもしれませんが、設置場所などの諸条件によってはとても大きなメリットになります。だからこそ、PoEという規格が存在しているわけです。

このモジュールはインテル Galileo Gen 2 ボードに直接はんだ付けが必要であり、シールドをコネクターに装着するのとは趣が異なります。この点がハードルとはなりますが、DIPピッチで10本です。ゆっくりあわてずに作業をすれば付けられるかと思います。必要に応じて挑戦してみるのもよいのではないでしょうか?

PoEができるとされてはいても、実際に装着してテストをしてみたことを紹介する事例はなかなかないようです。このメモが少しでも参考になれば幸いです。


  • インテル Galileo Gen 2 ボードで使用できるPoEモジュールはここで使用しているAg9712-FLのほかに、Ag9712-2BRがあります。
    出典:Intel Specifies Silvertel POE for Galileo Gen 2Silver Telecom Ltd.
  • ミッドスパンとも呼ばれる。
  • 詳しくは該当規格を参照のうえ、個々人の判断で必要な電圧及び電流量を確保できるものを選択してください。当ページではIntel Corporationが具体的なデータを一切提示していない(あるいは私が該当する記述を見つけることができていない)ことから何らかの推奨を示すことを差し控えます。
  • 100BASE-TXにおける未使用線(4と5および7と8)に電力を供給する方式。
  • 48V 0.5Aで4番および5番ピンを+、7番および8番ピンを-とするもの。
  • 信号線に電力を混合する方式。
  • 最初に電源を入れる際には、もしもの際に余計な機器にダメージが及ばないように最小限の構成とすることをお勧めします。
  • 今回の実測では11.8V。なお、ユニット自体の出力は実測で12.10Vでした。これはインテル Galileo Gen 2 ボードのPoEはんだ付け個所の右側付近(microSDカード・スロットの右側付近)にあるはんだポイントで測定することができます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です