はじめに
2015年2月9日にArduino IDE 1.6がリリースされました。いろいろと改善されているのですが、Intel Edison/Galileo向けのIntel版Arduinoは別枠でメンテナンスされており、同社のボードを使用する開発者は移行することができなかったのですが、約1か月後の3月11日にIntel版のArduino IDE 1.6もリリースされました。
Arduino IDE 1.6.0の特徴については「Arduino IDE 1.6 is released! Download it now – Arduino Blog(英語)」で詳しく説明されています。日本語では「Arduino IDE 1.6.0がリリースされました! – スイッチサイエンス マガジン」にてほぼ同じ情報を読むことができます。※1
今回はこのIntel版のArduino IDE 1.6.0をWindows 7 Ultimate環境にインストールしてみたいと思います。
ダウンロードについて
2015年3月19日追記:以下で指摘しているOS XとWindowsのリンク・ミスが修正されていることを確認しました。このメモの影響ということはないと思いますが、丁度のことで面白いタイミングです。※2
このIntel版Arduino IDE 1.6.0のダウンロード・ページには若干の混乱が見られます。
Intel Edison関連の各種ファイルをダウンロードすることができる「Intel® Edison Boards and Compute Modules — Software Downloads」というページにも「Intel® Arduino IDE 1.6.0」のダウンロード用リンクがあるにはあるのですが、リンク先がおかしいことになっていて、2015年3月18日現在以下のようになっています:
OS | リンク先 | 注記 |
---|---|---|
Linux 32 Bit | http://downloadmirror.intel.com/24783/eng/IntelArduino-1.6.0-Linux32.txz |
「File Type」が「.tgz 」と記載されているのにもかかわらず、拡張子がtgz ではなくtxz になっています。 |
Linux 64 Bit | http://downloadmirror.intel.com/24783/eng/IntelArduino-1.6.0-Linux64.txz |
同上 |
Mac OSX* | http://downloadmirror.intel.com/24357/eng/arduino-macosx-signed-1.0.4.zip |
以前のIntel版Arduino IDE 1.5.3のリリース1.0.4へのリンクになっています。 |
Windows* | http://downloadmirror.intel.com/24783/eng/IntelArduino-1.6.0-OSX.zip |
OS X版へのリンクになっています。 |
このようにOS X版のリンク先が旧版となっており、Windows版のリンク先が本来のOS X版へのリンクとなっていて、Windows版のリンクが存在しません(現状ではOS X版をダウンロードしたい人はOS Xのリンクではなく、Windowsのリンクをクリックすることで正しいファイルがダウンロードできます)。
というわけで、このページからはWindows版をダウンロードをすることはできませんが、Intel版Arduino IDEはIntel Galileoとも共有されたバージョンです。そこでIntel Galileo側のページ「Intel® Galileo Software Package 1.0.4」を参照すると以下の2本のファイルがダウンロードできます:
IntelArduino-1.6.0-Windows.7z
– 任意のフォルダーに展開するインストール不要版IntelArduino-1.6.0-Windows-Installer.exe
– インストーラー対応版
このようにフォルダーに自前で展開するバージョン以外にインストーラーからインストールすることができるバージョンも用意されています。今回はこちらのインストーラー版を使用することにします。
インストール手順
- 「Intel® Galileo Software Package 1.0.4」ページからインストーラー版である「
IntelArduino-1.6.0-Windows-Installer.exe
」をダウンロードします。※3 - ダウンロードした「
IntelArduino-1.6.0-Windows-Installer.exe
」を実行します。 - 「ユーザー アカウント 制御」の設定によっては、権限昇格の確認が確認が行われるので許可あるいは昇格します。
- 「Arduino Setup」が起動してライセンスが表示されます。ライセンスに同意するのであれば「I Agree」ボタンをクリックします(同意しなければインストールすることはできません)。
- インストールするコンポーネントを選択します。ここではすべて選択した状態で進めていきます。
- インストールする先のフォルダーを指定します。デフォルトでは「システム ドライブ」の「
\IntelArduino
」になっています。今回は「C:\IntelArduino
」を指定したものとして進めていきます。 - インストールが開始されるのでしばらく待ちます。するとArduinoのUSBドライバーのインストールを確認する表示が行われる(インストールするコンポーネントで「USB driver」を選択している場合のみ)ので、任意の対応を行います。ここでは「インストール」ボタンをクリックします。※4
- さらにしばらく待つとインストールが完了します。ある程度「プログレス バー」が伸びた後、そこまでの時間と比較してかなり時間がかかるようです。
- 「Close」ボタンをクリックしてインストーラーを終了します。
以上でインストールが完了し、「スタート メニュー」に「Intel Arduino」が追加されています(インストールするコンポーネントで「Create Start Menu shortcut」を選択している場合のみ):
これを起動してみると普通に起動します:
ここで1つ問題があります。Arduino IDEの新バージョンがあると報告してきます。確かに本メモの執筆時点で本家ではArduino IDE 1.6.1がリリースされています。しかし、Intel版はArduino IDE 1.6.0が最新なのです。にもかかわらず本家のバージョンを見てしまい、新バージョンの報告とダウンロードを促す表示がなされるのは適切とは言えないでしょう。今後このあたりの改良が必要になると思われます。※5
また、Intel版はIntel EdisonあるいはIntel Galileo Gen 2など、同社ボードのいずれかがデフォルトになっていてもいいのではないかと思わないでもありません。デフォルトではArduino Yunになっていますので、対象ボードに合わせて変更する必要があります。
定番の「Blink」を実行してみる
インストールしたIntel版Arduino IDE 1.6.0を使用して、Intel Edison Compute Moduleとインテル株式会社試作版Eagletを使用してArduino IDEのサンプル・アプリケーション「Blink」を実行してみます。接続方法、インテル株式会社試作版Eagletについては本メモの「フリスク(FRISK)を食べながらIntel Edisonをいじろう!」をご参照ください。※6
ボードとポートを適切に選択して実行してみると問題なくIntel Edison Compute Moduleにスケッチを転送し、実行することができることが確認できました。Intel版Arduino IDE 1.6.0から「Blink」スケッチを転送した際のログを以下に閉じた状態で示します(必要に応じて開いてください):
スケッチが プログラムストレージ領域の 76,207バイト (0%) を使用しています。最大は 10,000,000バイト です。
#!/bin/sh
starting download script
# clupload script to invoke lsz
Args to shell: C:\IntelArduino\hardware\tools\x86\bin C:\Users\sakaki\AppData\Local\Temp\build7424257486875294525.tmp/Blink.cpp.elf COM16
# Copyright (C) 2014 Intel Corporation
COM PORT 16
#
Converted COM Port COM16 to tty port /dev/ttyS15
# This library is free software; you can redistribute it and/or
Sending Command String to move to download if not already in download mode
# modify it under the terms of the GNU Lesser General Public
# License as published by the Free Software Foundation; either
# version 2.1 of the License, or (at your option) any later version.
Deleting existing sketch on target
#
# This library is distributed in the hope that it will be useful,
# but WITHOUT ANY WARRANTY; without even the implied warranty of
# MERCHANTABILITY or FITNESS FOR A PARTICULAR PURPOSE. See the GNU
# Lesser General Public License for more details.
#
# You should have received a copy of the GNU Lesser General Public
# License along with this library; if not, write to the Free Software
# Foundation, Inc., 51 Franklin Street, Fifth Floor, Boston, MA 02110-1301 USA
#
echo "starting download script"
echo "Args to shell:" $*
# ARG 1: Path to lsz executable.
# ARG 2: Elf File to download
# ARG 3: COM port to use.
#path contains \ need to change all to /
path_to_exe=$1
fixed_path=${path_to_exe//\\/\/}
#COM ports are not always setup to be addressed via COM for redirect.
#/dev/ttySx are present. Howwever, COMy -> /dev/ttySx where x = y - 1
com_port_arg=$3
com_port_id=${com_port_arg/COM/}
echo "COM PORT" $com_port_id
tty_port_id=/dev/ttyS$((com_port_id-1))
echo "Converted COM Port" $com_port_arg "to tty port" $tty_port_id
echo "Sending Command String to move to download if not already in download mode"
echo "~sketch downloadEdison" > $tty_port_id
#Move the existing sketch on target.
echo "Deleting existing sketch on target"
"$fixed_path/lsz.exe" --escape -c "mv -f /sketch/sketch.elf /sketch/sketch.elf.old" <> $tty_port_id 1>&0
Transfer complete
# Execute the target download command
#Download the file.
host_file_name=$2
"$fixed_path/lsz.exe" --escape --binary --overwrite $host_file_name <> $tty_port_id 1>&0
Sending: Blink.cpp.elf
Bytes Sent: 1024/ 75668 BPS:-2147483648 ETA 00:00
Bytes Sent: 9216/ 75668 BPS:-2147483648 ETA 00:00
Bytes Sent: 10240/ 75668 BPS:-2147483648 ETA 00:00
Bytes Sent: 11264/ 75668 BPS:1126386 ETA 00:00
Bytes Sent: 12288/ 75668 BPS:1228785 ETA 00:00
Bytes Sent: 13312/ 75668 BPS:1331184 ETA 00:00
Bytes Sent: 14336/ 75668 BPS:1433582 ETA 00:00
Bytes Sent: 15360/ 75668 BPS:1535981 ETA 00:00
Bytes Sent: 16384/ 75668 BPS:1638380 ETA 00:00
Bytes Sent: 17408/ 75668 BPS:1740779 ETA 00:00
Bytes Sent: 18432/ 75668 BPS:1843178 ETA 00:00
Bytes Sent: 19456/ 75668 BPS:1945576 ETA 00:00
Bytes Sent: 20480/ 75668 BPS:2047975 ETA 00:00
Bytes Sent: 21504/ 75668 BPS:2150374 ETA 00:00
Bytes Sent: 22528/ 75668 BPS:2252773 ETA 00:00
Bytes Sent: 23552/ 75668 BPS:2355172 ETA 00:00
Bytes Sent: 24576/ 75668 BPS:2457570 ETA 00:00
Bytes Sent: 25600/ 75668 BPS:2559969 ETA 00:00
Bytes Sent: 26624/ 75668 BPS:2662368 ETA 00:00
Bytes Sent: 27648/ 75668 BPS:2764767 ETA 00:00
Bytes Sent: 28672/ 75668 BPS:2867165 ETA 00:00
Bytes Sent: 29696/ 75668 BPS:2969564 ETA 00:00
Bytes Sent: 30720/ 75668 BPS:3071963 ETA 00:00
Bytes Sent: 31744/ 75668 BPS:3174362 ETA 00:00
Bytes Sent: 32768/ 75668 BPS:1638390 ETA 00:00
Bytes Sent: 33792/ 75668 BPS:1609133 ETA 00:00
Bytes Sent: 34816/ 75668 BPS:1582536 ETA 00:00
Bytes Sent: 35840/ 75668 BPS:1629082 ETA 00:00
Bytes Sent: 36864/ 75668 BPS:1602774 ETA 00:00
Bytes Sent: 37888/ 75668 BPS:1578658 ETA 00:00
Bytes Sent: 38912/ 75668 BPS:1556472 ETA 00:00
Bytes Sent: 39936/ 75668 BPS:1597432 ETA 00:00
Bytes Sent: 40960/ 75668 BPS:1575377 ETA 00:00
Bytes Sent: 41984/ 75668 BPS:1614761 ETA 00:00
Bytes Sent: 43008/ 75668 BPS:1592881 ETA 00:00
Bytes Sent: 44032/ 75668 BPS:1572564 ETA 00:00
Bytes Sent: 45056/ 75668 BPS:1609136 ETA 00:00
Bytes Sent: 46080/ 75668 BPS:1588959 ETA 00:00
Bytes Sent: 47104/ 75668 BPS:1570127 ETA 00:00
Bytes Sent: 48128/ 75668 BPS:1552510 ETA 00:00
Bytes Sent: 49152/ 75668 BPS:1535994 ETA 00:00
Bytes Sent: 50176/ 75668 BPS:1520433 ETA 00:00
Bytes Sent: 51200/ 75668 BPS:1551462 ETA 00:00
Bytes Sent: 52224/ 75668 BPS:1535949 ETA 00:00
Bytes Sent: 53248/ 75668 BPS:1521322 ETA 00:00
Bytes Sent: 54272/ 75668 BPS:1507508 ETA 00:00
Bytes Sent: 55296/ 75668 BPS:1535952 ETA 00:00
Bytes Sent: 56320/ 75668 BPS:1522116 ETA 00:00
Bytes Sent: 57344/ 75668 BPS:1509008 ETA 00:00
Bytes Sent: 58368/ 75668 BPS:1496572 ETA 00:00
Bytes Sent: 59392/ 75668 BPS:1484758 ETA 00:00 Moving downloaded file to /sketch/sketch.elf on target
Bytes Sent: 60416/ 75668 BPS:1510357 ETA 00:00
Bytes Sent: 61440/ 75668 BPS:1498495 ETA 00:00
Bytes Sent: 62464/ 75668 BPS:1523470 ETA 00:00
Bytes Sent: 63488/ 75668 BPS:1548445 ETA 00:00
Bytes Sent: 64512/ 75668 BPS:1573420 ETA 00:00
Bytes Sent: 65536/ 75668 BPS:1598395 ETA 00:00
Bytes Sent: 66560/ 75668 BPS:1623370 ETA 00:00
Bytes Sent: 67584/ 75668 BPS:1648345 ETA 00:00
Bytes Sent: 68608/ 75668 BPS:1673320 ETA 00:00
Bytes Sent: 69632/ 75668 BPS:1698295 ETA 00:00
Bytes Sent: 70656/ 75668 BPS:1723270 ETA 00:00
Bytes Sent: 71680/ 75668 BPS:1748244 ETA 00:00
Bytes Sent: 72704/ 75668 BPS:1773219 ETA 00:00
Bytes Sent: 73728/ 75668 BPS:1798194 ETA 00:00
Bytes Sent: 74752/ 75668 BPS:1823169 ETA 00:00
Bytes Sent: 75668 BPS:1483653
Transfer complete
#mv the downloaded file to /sketch/sketch.elf
target_download_name="${host_file_name##*/}"
echo "Moving downloaded file to /sketch/sketch.elf on target"
"$fixed_path/lsz.exe" --escape -c "mv $target_download_name /sketch/sketch.elf; chmod +x /sketch/sketch.elf" <> $tty_port_id 1>&0
Transfer complete
本家のArduino IDE 1.6シリーズとの共存
本家のArduino IDE 1.6シリーズとはデフォルトのインストール先パスが異なる※7ため、デフォルトのままインストールしているのであれば衝突することはなく、併存させることができます。ただし、ログオンしているユーザーに紐付くライブラリーやそれに伴うサンプル・スケッチなどは共有されます。どちらかでしか動作しないものも混在するので、その点は意識が必要です。
本家のArduino IDE 1.6シリーズとの差
基本的にIntel版のArduino IDE 1.6.0は本家Arduino IDE 1.6.0のスーパーセットで、Intel Galileo、Intel Galileo Gen 2、Intel Edisonへの対応が追加されたもののようです。今回は時間がなくて試してはいませんが、Intelのハードウェア以外でもそのまま使用できるのではないかと思われます。
※本家Arduino IDE 1.6.1のボード一覧
※Intel版Arduino IDE 1.6.0のボード一覧
まとめ
このように若干の混乱はありますが、Intel版のArduino IDE 1.6.0がリリースされています。Arduino互換ボードとしてIntel Edisonを使用されている方や、Intel GalileoおよびIntel Galileo Gen 2を使用されている方は、これを機会に新バージョンを試してみるのもよいのではないかと思います。
- スイッチサイエンス マガジンでは「WindowsとMac OSXのドライバが署名入りになりました。」と書いてある部分が原文では「Drivers and IDE are now signed for Windows and MacOSX」で、ドライバーだけではなくIDEも署名されている(さかきけい訳「WindowsとMacOSX版ではドライバーとIDEに署名がなされるようになりました。」)と書かれているなど、若干の差異があります。
- 該当ページの一番下に作成日、更新日などの情報があります:
Solution ID: CS-035180
Last Modified: 18-Mar-2015
Date Created: 14-Dec-2014このように現地時間2015年3月18日(日本時間でおそらく本日3月19日)に更新されており、このタイミングで修正されたものと思われます。
- 現時点では残念ながらIntel Corporationによる電子署名がなされていないため、改ざんの確認を行うことができず、ブラウザーによってはダウンロード後に警告が表示されることがあります。なお、本家のArduino IDE 1.6シリーズは電子署名がなされています。それだけに天下のIntel Corporationの配布するファイルとしては少々残念です。
- Intel Edison、Intel GalileoおよびIntel Galileo Gen 2のみしか使用しないのであればインストールする必要はありません。筆者は「Arduino Uno R3」も所持しているためインストールしています。
- この際に開かられるページは本家のダウンロード・ページである「Arduino – Software」です。
- 実行写真については特段変化がないため、従来撮影したものをそのまま流用しています。
- 「システム ドライブ」がCであれば、通常は「
C:\Program Files (x86)\Arduino
」あるいは「C:\Program Files\Arduino
」です。