はじめに
インプレスのPC Watchに米田 聡さんが「インテル Galileo Gen 2 ボード」について連載中なのですが、その中の「【1カ月集中講座】Intelの開発ボード「Galileo 2」の楽しみ方 第2回 ~LinuxとArduinoの混在コードを書いてみる」において、以下の記述が目に留まりました:
もっとも、Galileoを単なるArduinoと考えると、普通のArduinoを買った方がいいのでは? という気にもなる。Galileoは標準的なArduinoの2倍以上の価格が設定されているので、Arduinoでできることをやっている程度ではコストパフォーマンスが悪すぎるだろう。
うーむ…。これはちょっと事実誤認がいろいろとありそうだと私は思うので、そのことについて書いてみたいと思います。
Arduino Uno R3とインテル Galileo Gen 2 ボードを比較する
インテル Galileo Gen 2 ボードはArduino Uno R3と互換性を持つように設計されています。ですから、このArduino Uno R3とインテル Galileo Gen 2 ボードの仕様について比較してみたいと思います:
項目 | Arduino Uno R3 | インテル Galileo Gen 2 ボード |
---|---|---|
CPU | ATmega328 | Intel Quark SoC X1000 |
動作電圧 | 5 V | 5 V / 3.3 V |
入力電圧(推奨) | 7 V ~ 12 V | 7 V ~ 15 V |
入力電圧(限界) | 6 V ~ 20 V | 同上 |
USB受電動作 | 可能(制限あり) | 不可能 |
デジタル入出力ピン | 14(このうち6がPWMに対応) | 20(このうち6がPWMに対応) |
アナログ入力ピン | 6 | 6 |
I/OピンあたりのDC電流 | 40 mA | ? |
3.3 VピンへのDC電流 | 50 mA | ? |
フラッシュ・メモリー | 32 KB(ATmega328) このうち0.5 KBをブートローダーが使用 |
8 MB ブートローダーおよびファームウェアと兼用 |
SRAM | 2 KB(ATmega328) | 512 KB(Intel Quark SoC X1000) |
EEPROM | 1 KB(ATmega328) | 8 KB |
クロック速度 | 16 MHz | 400 MHz |
Ethernet | 別売シールドで対応 | 内蔵 |
microSD | 別売シールドで対応 | 内蔵(最大32 GBまで対応、SDIO対応) |
USB 2.0 | 別売シールドで対応 | USB 2.0を内蔵 |
ACアダプター | 別売 | 同梱 |
このようにArduino Uno R3と比較して、インテル Galileo Gen 2 ボードはそのお値段に合わせて盛りだくさんの内容となっています。仮にこれらのシールドと同梱のACアダプターをすべて追加したとして価格を計算してみましょう(価格は全て2014年10月20日時点でのスイッチサイエンスの通信販売価格から引いています):
パーツ名 | 価格 |
---|---|
Arduino Uno R3 | ¥3,024- |
Arduino イーサネットシールド R3(microSDスロットも搭載) | ¥4,752- |
USBホストシールド | ¥2,818- |
Arduinoシールド用ピンソケットのセット(USBホストシールドに必要) | ¥154- |
ACアダプター 12V/0.5A※1 | ¥918- |
合計 | ¥11,666- |
合計で¥11,666-となりました。ちなみにインテル Galileo Gen 2 ボードは同社で¥7,884-ですので、その差額は¥3,782-となり、インテル Galileo Gen 2 ボードの方がスペックの割りに安価であるといえます。
インテル Galileo Gen 2 ボード側に有利な点は、この価格のほかに処理速度、大容量のメモリー、またシールドによる実装ではなく内蔵されたEthernetやmicroSDスロットおよびUSB 2.0のため、Arduinoピンのリソースを一切使用しないという点が挙げられます。
一方でArduino Uno R3が有利なのは、インテル Galileo Gen 2 ボードよりも比較的多くのシールドを使用することができ、基板のサイズも小さく、消費電力も少ない点です。
まとめ
このように、インテル Galileo Gen 2 ボードはArduino互換ボードとしても見たとしても決して割高とはいえないと思います。それぞれの魅力、それぞれの特徴があるため、それぞれをうまく使い分けていくというのが正しい見方だと思います。使用する人の好み、あるいは用途・諸条件によってはインテル Galileo Gen 2 ボードの方がよいこともあるでしょうし、逆にArduino Uno R3や他のボードの方がよいケースもあるでしょう。
そんなわけで、該当する連載記事はあまりにも視野が狭い状態でデメリットばかりを眺めて「インテル Galileo Gen 2 ボード」について評価を下しているように私には見えました。
おまけ
ここのサイトでは今まで登場させていませんが、私はArduino Uno R3も持っています 🙂
- Arduino Uno R3はインテル Galileo Gen 2 ボードよりも省電力であるため、小出力のものを選択しています。