LOVE MY LIFE

リニューアル前の「Overflow! さかきけいのページ」のコラムでも何度か書いた(と思う)のですが、やまじえびねさんという漫画家の方がいらっしゃいます。この方の「LOVE MY LIFE」を原作にした実写映画が昨年末くらいに公開されていたようです。というのも、職場の近くにある本屋に置いてあった「LOVE MY LIFE」の帯に書いてあったから知ったわけですが・・・。それが既に DVD になっており、それを知らなかった私も DVD ショップで目についてためらいもなく購入しました。結構表紙の写真は写真としてすごく綺麗ですけれど、扇情的だと思います。それ故目に留まったことは否定できないのですが(映画版LOVE MY LIFEのページ)。

ということで、そのまま続けて観た感想を書きたいところですが、一応作品の概要について書いておきたいと思います。この「LOVE MY LIFE」は、二人の女性が主人公(あえてどちらが主人公かというとイチコなのですが)です。この二人の女性の恋愛を主軸に添えて、それぞれの人生観や、家族、友達などの関係を描いたものです。少しほかの作品と違うのは、主人公のお二人が女性同士でありながらカップルであるというところです(女性同士の話なのは、おそらく原作の掲載誌が女性向け雑誌であったためと推測しています)。そして、この描かれている世界の中では、同性愛がマイノリティーであることをリアルに表現しつつ、その上で登場人物の半分以上が男女問わず同性愛者であるという描かれ方をしている作品です。この点については原作と映画の間で差異はありません。

さてこの作品ですが、原作は比較的淡々と描きながら、そのテンポの中でかなりリアルでありながら、主人公イチコを中心とした世界を描き、マイノリティである同性愛の実情や親子関係、そして家族とは、というものを感じさせてくれます。もう片方の主人公である、エリーとの差異(ある意味で、これがイチコと現実との差異を感じさせてくれる)や、それぞれの恋愛や個々人の独立性などをスパっとストレートに表現されています。あるべきもの、を変に避けることなくストレートに描いているという印象を抱いたことを覚えています(すみません、実は原作の本がこれを書いている時点で行方不明なのです。月間で30冊以上のマンガ本を購入する関係でどうしても行方不明になりやすく…。そのうちまじめにコンピュータ管理しようともくろんでいます)。

そして今回観てみた DVD ですが、実は購入時点ではあまり期待していませんでした。というのも、原作の表現のすばらしさ、つまり完成度の高さから、わざわざ映像表現にするという必然性を感じていなかったのです。マンガを原作とした映像作品は数々存在しますが、正直なところ、原作をいい意味で継承して昇華させた作品というのは少ないと思うのです。それは、その映像作品が興行的に成功したか否かではなく、原作のファンが納得できる作品に仕上がっているか否か、という視点での話です。そんなわけで、あまり期待していなかったのです。

しかし、本作品は違いました。やまじえびねさんの原作を継承しつつ、映像作品としての昇華をきちんと果たしていたと思います。もちろん、原作ファンとしては「ぉぃぉぃ」(主にそれをカットするかー、みたいなところなんですけど)と思う部分もあります。が、それは見解の相違というもので、何を描いて、何をカットするか、そして何を表現するか、という範囲を超えるものではなく、原作のある映像作品によくあるおせっかいさはかなり軽減されていたと思います。

本作はマンガ版より分かりやすく整理されていると思います。しかし、マンガ版にあった一部のエッセンスはそれ故にオミットされています(そして、もちろん映像作品上で追加されているものもあります)。その上で、映像表現として本作は私の満足のいくものでした。個人的には、イチコ(吉井玲)さんの父親役に小説家やコメンテータとして有名な石田衣良さんを選択したのはベストチョイスでストレートヒットでした。

ストーリーについては敢えて触れないことにして観想を書いてみたわけですが、多少は作品を観た思いが伝わっていればと思います。レンタルでもなんでも観てみていただけるといいなー、などと私は思ったりしています。私は原作が先でした。おそらく、映像作品が先であっても原作は別の視点で見れると思います。できれば両方を……などと私はお勧めしたいところです。

本作(原作および映像作品両方)のいいところは、人間関係を個人レベルでの関係であると言及した上で、相互の価値観や個としての立ち位置やそれに伴う責任を描いているところにあると思います。

LOVE MY LIFE に関する追記

後で気付いたのですが、本作品は PG-12 のレーティングが設定されています。12歳未満(小学生以下)の鑑賞には成人保護者の同伴が適切とされています。制限のかかる方々が同作品を鑑賞する際にはこの設定に従うようお願いいたします m(__)m

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