はじめに
平文(本稿では可読性のあるデータの意で使用します)を暗号にすることを「暗号化」といいます。この暗号を平文に戻すこと意図して「復号化」と書かれているケースがかなり見受けられます。
今回は、これが誤りである、ということを解説したいと思います。
2つの状態
この話で登場する状態は「平文」と「暗号」の2つだけです。
「平文」を「暗号」にする
「平文」を「暗号」に変化させるのは、文字通り変化ですから「暗号化」です。非常にシンプルな話です。
「暗号」を「平文」にする
続いて「暗号」を「平文」に戻す際の言葉はなんでしょうか? タイトルからもわかるように、「復号化」ではありません。では、なぜ違うのでしょうか?
図を見るとわかりますが、「暗号」を「平文」に変化させるのは、「平文」を「暗号」に変化させる「暗号化」とは違い、変化する先は「平文」です。ですから、「復号化」ではないのです。変化先は「復号」ではなく、「平文」だからです。あえて「暗号化」と同じように「化」を付けて書くとすれば「平文化」でしょう。ただ、この表現は通常用いられません。代わりに使用される言葉は「化」のつかない「復号」です。
ここまで説明するとお分かりかと思いますが、「復号」は操作そのものを指す言葉ですから、「復号化」とはしません。してはいけないのです。
まとめると、
- 「平文」を「暗号」に変化させることを「暗号化」という。
- 「暗号」を「平文」に戻すことを「復号」という。
- あえて「化」を付けるとすれば、「暗号」を「平文」に変化させることは「平文化」という表現になるだろうが、通常使われることはない。
といった感じになります。
おわりに
以上のように、順を追って考えてみると「復号化」では言葉の使い方がおかしいということがわかるかと思います。
ところで、これがおかしいということを覚えたとして、どのような場面で生きてくるのでしょうか?
それはなかなか難しい問題です。あなたが暗号について説明する資料やメールを書く立場にあるのであれば、正確な表現を使うことで、セキュリティを学んだことがある人には正しい知識を身に着けていると思われる可能性が高まるでしょう(例えば独立行政法人 情報処理推進機構が実施している国家試験である情報処理技術者試験の情報セキュリティスペシャリスト試験では、「復号化」ではなく正しい方の「復号」で統一しており、午後の筆記試験では文字を記入するマスの数が限られる関係で正しく覚えていないと回答が難しくなります。このため、この試験のための勉強をしたことがある人であれば「復号」と覚えているはずです)。
一方で正しく覚えていない人には、「復号じゃなくて、復号化では?」、と指摘を受けることもあるかと思います。その場合にはここでの説明のように順を追って説明してみてください。論理的な判断と理解ができる人であれば受け入れて、次からはその人も正しい言葉を使うようになるかと思います。
平文を暗号化してできるのは暗号文じゃないかしら。
誤解を生まないことを目的とするなら
確かに暗号って文以外にも光信号による暗号だったり色々あると思うから、
>平文を暗号化してできるのは暗号文
と言ったほうが良いと思います。
でもこの記事は、分かりやすく説明することを目的として
>「平文」を「暗号」に変化させるのは、文字通り変化ですから「暗号化」
という風にシンプルに書いているのだと思いますよ。
暗号の中に暗号文は含まれますから、間違いではないですよね。
>この話で登場する状態は「平文」と「暗号」の2つだけです。
冒頭で筆者は状態には「平文」「暗号」があると述べてます。
>平文を暗号化してできるのは暗号文じゃないかしら。
魯引庵様は物の呼び方の話をされてますので、論点が違いますね。
お二人ともおっしゃる通りで、
文章が「暗号」状態の物を「暗号文」と呼びますよね。
水の話に置き換えると
■筆者
状態には「液体」「気体」があります。
「液体」を沸騰させると「気体」になります。
■魯引庵様
液体を沸騰してできるのは水蒸気じゃないかしら
図を見るとわかりますが、「暗号」を「平文」に変化させるのは、「平文」を「暗号」に変化させる「暗号化」とは違い、変化する先は「平文」です。ですから、「復号化」ではないのです。変化先は「復号」ではなく、「平文」だからです。あえて「暗号化」と同じように「化」を付けて書くとすれば「平文化」でしょう。ただ、この表現は通常用いられません。代わりに使用される言葉は「化」のつかない「復号」です。
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この部分ですが、最初に出てくる「復号」
「暗号」では?
「元の文」→「暗号」 が「暗号」化なら
「元の文」←「暗号」 なら「元の文」化
「元の文」の名称が「平文」なら、「復号」化ではなく「平文」化
「復号」←「暗号」 なら「復号」化だけれども、元の文を「復号」といわない以上、復号「化」という表現はおかしいので、あえて表現するなら「再び元に戻すという」意味で「復号」という表現になる。
ということなので、言葉遣いについて問題は全くないように思えます。