Intel Quark microcontroller D1000/D2000/SE SoCの仕様概要

はじめに

Intel Corporationが2015年11月2日付け(アメリカ、カリフォルニア州サンタクララ:現地時間)で「New Intel IoT Platform Makes More ‘Things’ Smart and Connected」というニュース・リリースを掲載しました。

このメモでは、このリリースの中で触れられている「Intel® Quark™ microcontroller D1000」「Intel® Quark™ microcontroller D2000 for IoT solutions」および「Intel® Quark™ SE microcontroller」の仕様について概要をまとめてみたいと思います。

Intel® Quark™ microcontroller D1000(コードネーム:Silver Butte)

Intel Quark Microcontoroller D1000 イメージ

特徴 内容
CPU MCUに適合させた 33 MHz 32-bit ハーバード・アーキテクチャー※1
フラッシュ・メモリー 命令 32 KB + データ 4 KB
保持 10年以上
耐久 20,000サイクル以上
RAM 8 KB
ROM 8 KB
スタンバイからの復帰 3 μs 未満
汎用タイマー 3
ウォッチドッグ・タイマー あり
リアルタイム・クロック あり
UART 2
SPI 2(最大4デバイスに対応するマスターが1、スレイブが1)
I2C 1(マスター/スレイブ)
同時シリアル入出力 全て(5チャネル)
ADC 19チャネル SAR(12/10/8/6-bit @ 2.4/2.8/3.3/4.1 MSps)
コンパレーター スタンバイからの復帰が可能なコンパレーター:19
高速:6
低消費電力:13
セキュリティー セキュリティー専用ピン、JTAGロックアウト
パッケージ・タイプ 40-pin QFN, 6×6 mm
電源ドメイン 5
クロック・ドメイン 8
最小/最大 水晶数 0/2
水晶発振器 20 – 33 MHz (オプショナル)
32 KHz (RTC用、オプショナル)
シリコン発信器 4/8/16/32 MHz ±2%
ADCクロック・ジェネレーター 15.625 KHz ~ 33 MHz
CPUクロック・ジェネレーター 125 KHz ~ 33 MHz
入力電圧 1.6 – 3.6 V
フラッシュ書き込み電圧 1.6 – 3.6 V
最大周波数電圧 1.6 – 3.6 V
電圧レギュレーター 1.35 – 1.8 V ±10%
リニア低損失 1.0 ~ 300 μA
負電流 0.3 – 50 mA
アクティブ電流@3.3 V 0.5 mA @ 1M Hz
1.3 mA @ 4MHz
7.7 mA @ 32 MHz
スタンバイ電流@3.3 V 2.1 μA(RTCを除く)
4.8 μA(RTC込み)
維持電流@3.3 V 1.6 μA(RTCを除く)
3.0 μA(RTC込み)

注記

  1. 電力は25℃において3.3 Vの電源と静的なI/Oにおけるデバイスで計測しました。
  2. アクティブ電力は64点高速フーリエ変換を実行中に計測しました。
  3. 電力とレイテンシーの値はシリコン発信器が使用されていると仮定します。
  4. RTCを省いたスタンバイ電流と維持電流は1つの低消費電力ウェイクアップ・コンパレーターが有効であると仮定します。

Intel Quark microcontroller D1000(Silver Butte)のダイアグラム

※さらに詳しい仕様については別のメモ「Intel Quark Microcontroller D1000について」を参照ください。

Intel® Quark™ microcontroller D2000 for IoT solutions(コードネーム:Mint Valley)

Intel Quark microcontroller D2000のイメージ

特徴 内容
CPU 32-bitのプロセッサー@32 MHz動作する、x87浮動小数点演算ユニットを取り外したIntel® Pentium® x86との互換性
フラッシュ・メモリー 命令 32 KB + データ 8 KB
RAM 8 KB
汎用タイマー 2
PWM(Pulse width modulator) 2
ウォッチドッグ・タイマー 8 μs から 60 sの分解能を持つ(32 MHz駆動時)
RTC(Real-time clock) 1 Hzから32.768 kHzで動作する32-bitカウンターをソースとする
UART 2つの16550と互換性のあるインターフェース
SPI 2(1つは4つのデバイスまでが使用可能なマスター、1つはスレイブ)
汎用I/O(GPIO) 独立して構成可能な25本
I2C 1(マスター/スレイブ)
ADC 19チャネルのSAR(12/10/8/6-bit@2.4/2.8/3.3 MSps)
アナログ・コンパレーター 19本のアナログ・コンパレーター:

  • 高性能が6本
  • 低消費電力が13本
    DMA(Direct Memory Access) 片方向2チャネル
    セキュリティー セキュア・アップデート
    8 KB OTP(One-time Program:1度だけ書き込み可能)
    JTAGロック
    分離したSRAM領域
    オンダイ統合されたNVM(不揮発メモリー)の読み出し/書き込みアクセス制御
    パッケージ・タイプ 40-pin QFN, 6×6 mm
    水晶発信器(外部発信) 32 MHz
    32.768 KHz
    シリコン発信器(内部発信) 32 MHz
    32.768 KHz
    ADC 逐次比較
    シングルエンデッドの19入力
    1.8 – 3.6 V
    CPUクロック生成 4/8/16/32 MHz
    RTCクロックをソースとする低消費電力コンピュート・モード
    電圧 PCDD: 1.8–3.63 V
    AVDD: 2.0 – 3.63 V
    IOVDD: 1.8 – 3.63 V
    DVDD: 1.8 V +/- 10%
    SoCの状態 アクティブ、スリープ、およびオフ
    プラットフォームの電力 DC-DC 2.0 V, 3.3 V
    動作温度 -40 ℃ ~ +85 ℃

    Intel Quark microcontoller D2000(Mint Valley)のダイアグラム

    Intel® Quark™ SE microcontroller(コードネーム:Atlas Peak)

    Intel Quark SE microcontrollerのイメージ

    特徴 内容
    CPU 32-bitのプロセッサー@32 MHz動作する、x87浮動小数点演算ユニットを取り外したIntel® Pentium® x86との互換性
    8 KB 命令キャッシュ、2ウェイ・アソシエイティブ
    センサー・サブシステム 32-bit DSPコア@32 MHz
    ARC v2 ISA※2と浮動小数点演算ユニットをサポート
    8 KB 命令キャッシュ、2ウェイ・アソシエイティブ
    8 KB DCCM※3
    パターン・マッチング・アクセラレーター 128ニューロン(1ニューロンあたり128コンポーネント)
    フラッシュ・メモリー 384 KBのオンダイのフラッシュ・メモリー

    • ホスト・プロセッサー専用の192 KB
    • センサー・サブシステム専用の192 KB

    8 KBのOTP(一度だけ書き込み可能なメモリー)

    RAM オンダイのSRAM 80 KB
    汎用タイマー 4
    ウォッチドッグ・タイマー 1
    RTC(Real-time clock) 1 Hzから32.768 kHzで動作する32-bitカウンターをソースとする
    UART 2つの16550と互換性のあるインターフェース
    SPI 2(1つは最大4デバイスまで使用可能なマスター、1つはスレイブ)
    汎用I/O(GPIO) 独立して構成可能な32本
    追加でセンサー・サブシステムを経由して使用可能な16本
    USBコントローラー 1.1のデバイス専用コントローラー
    I2C 2つの汎用I2Cインターフェースがあり、これはマスターまたはスレーブに構成可能
    2つのマスターを構成できるのはセンサー・サブシステムのみ。
    インターフェースのスピード: 100 kbps, 400 kbps, and 1 Mbps
    I2S 2つのI2Sインターフェース:

    • 1つの伝送用インターフェース
    • 1つの受信用インターフェース
    ADC センサー・サブシステムに存在する1つのADCコントローラー
    19のシングルエンデッド入力
    12-bit分解能
    アナログ・コンパレーター 19本のアナログ・コンパレーター:

    • 高性能が6本
    • 低消費電力が13本
      DMA(Direct Memory Access) 片方向8チャネル
      セキュリティー 8 KB OTP(One-time Program:1度だけ書き込み可能)
      JTAGロック
      オンダイ統合されたNVM(不揮発メモリー)の読み出し/書き込みアクセス制御
      パッケージ・タイプ 10×10 mm, 144-BGA
      水晶発信器(外部発信) 32 MHz
      32.768 KHz
      シリコン発信器(内部発信) 32 MHz
      32.768 KHz
      CPUクロック生成 4/8/16/32 MHz
      RTCクロックをソースとする低消費電力コンピュート・モード
      SoCの状態 アクティブ、スリープ、およびオフ

      • ホスト・プロセッサーの状態: C0 – C2
      • センサー・サブシステムの状態:
        センシング・アクティブ、センシング・ウェイトおよびセンシング・スタンバイ
      プラットフォームの電力 DC-DC 1.8 V, 3.3 V
      動作温度 -40 ℃ ~ +85 ℃

      注記

      1. 電力は25℃において3.3 Vの電源と静的なI/Oにおけるデバイスで計測しました。
      2. アクティブ電力は64点高速フーリエ変換を実行中に計測しました。
      3. 電力とレイテンシーの値はシリコン発信器が使用されていると仮定します。
      4. RTCを省いたスタンバイ電流と維持電流は1つの低消費電力ウェイクアップ・コンパレーターが有効であると仮定します。

      Intel Quark SE microcontoller(Atlas Peak)のダイアグラム

      出荷時期

      Intel Quark microcontroller D1000は発表当日から、Intel Quark microcontroller D2000は今年度末までには、そしてIntel Quark SE SoCは2016年の前半に使用可能となる見込みです。

      Wind River Rocket

      Intel Corporation傘下のWind Riverは今回の発表に合わせる形でx86やARMで動作するRocketというRTOSを発表しました。わずか4 KBで動作するという極小のRTOSです。

      IoTが動作するMCUを地(Earth = Deep Edge)と考え、雲(Cloud)へ射出するためのロケットという意味合いでのネーミングのようです。

      Wind RIver Rocketのスライド

      まとめ

      正式発表を受けて、まずは仕様をまとめてみました。この3種の製品はどれも同じ周波数帯に向けられたもので、Intel® Quark™ microcontroller D1000と同D2000は比較的似た特性を持っているように見えます。しかし、それぞれの機能は異なり、そのターゲットも異なるものであるということを示しています。一方でIntel® Quark™ SE microcontrollerは似てはいるものの若干異なる構成となっています。

      これらを見比べてみると、Intel® Quark™ SE microcontrollerだけは明らかに別の設計となっているように感じます。

      参考資料


      • IA-32互換命令セットですが、ハーバード・アーキテクチャを採用している関係で一部は従来のIA-32の動作と互換性がありません。
      • SynopsysのDesignWare ARC EM Processor Familyに属するARCv2DSP ISAのことです。このProcessor IPを使用しているようです。
      • Data Closely Coupled Memory

      関連記事

      コメントを残す

      メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です